尿の変色




 尿は通常黄色〜琥珀色ですが、食餌性もしくは健康状態により異常な色をすることがあります。

1.赤い尿
 赤い尿の原因として多いものは血尿、ミオグロビン尿、ヘモグロビン尿です。

血尿
血液が尿中に出てきている状態です。尿路の感染・炎症、組織の損傷があるということです。主な疾患は
腎糸球体疾患、膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍、尿道炎、尿道結石、尿道腫瘍、前立腺疾患などです。
尿中の
潜血反応は陽性で顕微鏡でも赤血球が確認されます。

ヘモグロビン尿
ヘモグロビンとは血液中に含まれる色素であり(血色素)、血管内での
赤血球の溶血で起こります。少量の溶血では肝臓でヘモグロビン→ビリルビンへの反応が起こるため、溶血速度>肝臓での処理となった場合のみ見られます。尿の変色以外に貧血や黄疸などの他の症状が見られることも多いです。主な疾患は免疫介在性溶血性貧血、フィラリアの急性症状「ベナケバシンドローム」、バベシア症、ヘモバルトネラ症などです。
尿中の
潜血反応は陽性ですが顕微鏡検査では赤血球は見られません。血漿成分は赤く変色しています。

ミオグロビン尿
ミオグロビンは筋肉中に含まれる色素であり、
筋肉の損傷があったことを示しています。よく激しいスポーツの後「血のオシッコ」が出たというのはこれのことです。赤と言うよりは褐色に近い色を示します。主な疾患は運動性横紋筋融解症候群(グレーハウンド筋痙攣)、急性多発性筋炎、全身性変性性ミオパシーなど です。
尿中の
潜血反応は陽性ですが顕微鏡検査では赤血球は見られません。血漿成分は透明のままです。

2.褐色の尿
 酸性の尿中にビリルビン・ミオグロビン・ヘム生成物が存在するときに起こります。

ビリルビン尿
ビリルビンはヘモグロビンが肝臓中で処理されて出来る色素で、黄疸のもととなるものです。溶血性疾患・肝臓疾患・胆管の疾患により血中のビリルビン濃度が増加することによって起こります。
溶血性疾患(肝前性)
免疫介在性溶血性貧血、フィラリアの急性症状「ベナケバシンドローム」、バベシア症、ヘモバルトネラ症など
肝臓疾患
胆管炎/胆管肝炎、銅蓄積症、肝線維症、肝硬変、犬伝染性肝炎、レプトスピラ感染症、猫白血病ウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎、肝リピドーシス、肝腫瘍、薬物など
胆管閉塞性疾患(肝後性)
胆管炎/胆管肝炎、胆嚢炎、胆泥症/胆石、腫瘍による圧迫など
尿中の
潜血反応は陰性です。フィラリアの急性症状を除外するために超音波検査を行い、貧血・バベシア・肝疾患を見るために血液検査を行います。