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●どんな病気?
フィラリアは肺動脈という所に虫が寄生することによって起こる病気です。感染していても最初は何も症状はありません。何年もたち、肺と心臓がぼろぼろになってから症状がでてくる病気です。
症状が出始めたときには手遅れと言うことも多い病気です。
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慢性症状は肺血管の変性により起こるもので、咳・運動に耐えられない・体重減少・腹水などです。
急性症状(ベナケバ・シンドローム)は虫体が心臓の弁にからみついて起こるもので、ワイン色の尿・急な虚脱・急死です。
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肺動脈の中で虫がうねうね動くことによって血管は傷つき、血管の中がでこぼこのカチカチになって血液の流れが悪くなります。すると体は普段使っていない血管も総動員しはじめます。 |
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肺に行く血管が5本あったとすると、普段は3本だけ使って後の2本は運動した時用にとっておくのですが、元の血管がダメになってしまうため普段から5本とも精一杯使っているようになります。すると心肺能力の予備機能が無くなっているので、運動するとぜいぜいしたり、失神したりしてしまいます。いったんかかってから治療をはじめても、ぼろぼろになった血管は完全に元通りにはならないので、長期間の薬を服用しないといけなくなってしまいます。健康に見えても病気は徐々に進行しており、症状が見られるのは肺と心臓がダメージを受けた後です。
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急性症状は肺動脈の病変が進行している時に起こることが多いですが、感染犬に予防薬を飲ませたときに死滅したミクロフィラリアが肺の血管に詰まり、そこから発症することもあります。
急性心不全を起こしているので放置すれば速やかに死に至ります。一刻も早く虫体を心臓から取り除いてあげないといけません。
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また、フィラリアにかかった犬が近くにいると、その血を吸った蚊を通して人間も感染します。一番感染する可能性のあるのは身近にいる家族の人となります。日本国内でも、肺の腫瘍と診断されて肺を取ってみたらフィラリアによる肉芽腫だった、ということが時折起こっています。
●フィラリアの生活環
フィラリアの成長段階は第1期幼虫〜第5期幼虫(L1〜L5)までの幼虫と成虫からなります。LはLarva=幼虫のことです(以下略)。L1〜L3までは蚊の体内で過ごし、L3〜成虫までは犬の体内で過ごします。
フィラリアに感染した犬の血液中にはミクロフィラリアと呼ばれるL1がいます。蚊はそのL1を吸血によって体内に取り込みます。感染犬の血液中にいるL1は蚊に取り込まれないと成虫になることはできません。
気温が15.6℃以上の条件において、蚊に取り込まれたL1は春・秋は2〜4週間、夏場は9〜14日間でL3まで成長します。このL3というのが感染幼虫です。L3を持っていない蚊に刺されてもフィラリアに感染することはありません。
媒介する蚊の種類としては日本ではトウゴウヤブカが主だと言われています。
L1からL3までの成長場所はマルピーギ管という所ですが、L3まで成長すると吻鞘にうつり吸血を待ちます。
吸血に伴い、蚊の吻鞘の膜が破裂して皮膚の上にL3がまき散らされます。L3は唾液の中を自力で移動して傷口から犬の体内に侵入します。そして皮膚の下で2回脱皮し、L5になった後血管に入り込み血流に乗って肺動脈まで移動します。L3の侵入から肺動脈までの移動するまでの期間は85〜120日です。
そして肺動脈の中で成虫となり、感染後6ヶ月たつと体中にミクロフィラリア(L1)を放出し始めます。ミクロフィラリア血症は年中を通してみられ、吸血によって蚊の体内に移行します。15.6℃以下の条件では、蚊の体内においてL3まで発育することはできません。
蚊に移れなかったミクロフィラリアは2〜3年で死んでしまいます。成虫の寿命は5〜6年です。
●予防について
フィラリアは蚊から移る病気ですが、毎月の内服薬やスポット薬もしくは6ヶ月毎の注射によって感染を予防することができます。
予防しないと、野外で飼っている犬の80%、室内犬でも20%がひと夏のうちに感染します。ひとたび感染すると、肺動脈と心臓の病変はどんどん進行していきます。
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予防についての詳しいお話は別項に移しましたのでHDU概念による予防期間の考察をご覧下さい。
●フィラリアの血液検査について
フィラリアの薬は要指示薬といって、注意事項を守らないと副作用がおこる可能性のある薬です。決められた手順を踏まないと出してはいけないことになっており、血液検査でフィラリアがかかっていないことを確認してから出すようにと全ての薬において指示されています。検査なしで処方を認められている薬は存在しません。検査なしで処方することも認められていません。
ミクロフィラリアというフィラリアの仔虫が血液中にいるときにそれを知らずにフィラリアの予防薬を使うと、アレルギー反応を起こしてショック死したり、薬で死滅したミクロフィラリアが肺や腎臓に詰まって肺炎や腎炎を起こしたり、フィラリアの急性症状を招いたりすることがあります。
そのためフィラリアの感染の有無を調べてから予防開始となります。毎年きちんと予防薬を飲んでいるコでも、口に入れた薬を後でペッと吐いていると薬の効果はありません。飼い主がしっかり飲ませていたはずでも感染しているということがたまにあります。そのため去年の予防がうまくいっていたかを検査してからでないと出してはいけないということになっています。
フィラリアの検査をせずに薬を飲ませるということは、運が悪いとかかっていて死ぬことがあるということを意味していますので、当院では検査なしでの薬の処方は致しません。
なお子犬で去年の冬場以降に生まれ、感染の可能性がないコは血液検査の必要はありません。またすでに感染している犬には感染しているとき用の予防方法を行っていきます。
フィラリアの検査には2種類あり、ひとつはミクロフィラリア(仔虫の有無)を調べる方法、もうひとつは抗原検査(親虫の有無)です。どちらも優れた方法ですが、ミクロフィラリアがいなくてもフィラリアが感染していないかどうかの証明にはなりません。仔がいなくても親がいる(オカルト感染)ことがあるからです。抗原検査(親虫が出す体のカケラ)をすれば親虫がいないかどうかを直接調べることができ、当院ではフィラリア抗原の検査を直接行っています。一般的なミクロフィラリア検査によるフィラリア感染の検出率は47.2%、抗原検査(ソロステップ)による検出率は90.4%と言われています。
検出できない主な原因としては単数寄生で雄しかいない、フィラリア虫体が若かった、などがあります。
去年の予防をきちんと最後まで間をあけずにしていただいた方には簡易検査もいたしております。
採血が難しいコには注射予防にすると2年目以降の採血が不要です。
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