中毒物質一覧
アスピリンアセトアミノフェンエチレングリコールしょうのう
石油製品タマネギチョコレート中毒ナフタリン
ハチパラコートパラジクロロベンゼンピレスリンホウ酸塩
マムシメタアルデヒド(ナメクジ駆除剤)、
有機リン・カーバメート(農薬)、ワルファリン(殺鼠剤)




アスピリン
催吐○、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤○
人間の鎮痛・解熱剤に入っている成分です。
ネコは特に分解能力が低いため、中毒になりやすくなっています。
摂取後4-6時間で症状が起こります。プロスタグランジンの生成阻害を起こします。
抑鬱、嘔吐、食欲不振、胃腸出血、赤血球のハインツ小体、肝炎、嗜眠、呼吸速迫〜(高用量)呼吸抑制、電解質異常、発熱、昏睡、死が起こります。
輸液、利尿、電解質補正をしながら胃粘膜保護剤、活性炭を飲ませる補助療法が主体となります。

アセトアミノフェン
催吐○、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤○
人間の風邪薬に入っている成分です。ネコは
特に分解能力が低いため、中毒になりやすくなっています。
代謝にグルタチオンを消耗するため、枯渇します(ネコで特に)。
チアノーゼ、呼吸困難、顔面浮腫、抑うつ、低体温、嘔吐、肝酵素上昇、メトヘモグロビン血症、衰弱、昏睡、死が起こります。
消費されたグルタチオンを補充し、ビタミンC、胃粘膜保護剤を使用します。

エチレングリコール
催吐○、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤○
不凍剤に入っていました。今はあまり入っている物はないらしいですが、甘い味がするのでガレージに保管してあるのを犬がペロペロなめて中毒になることが多かったそうです。
肝臓で代謝され、グリコアルデヒド、グリコール酸エステル、シュウ酸エステルとなり、悪さをします。
ステージ1:30分〜12時間。
嘔吐、抑鬱、運動失調、痙攣、多飲多尿
ステージ2:犬)〜24時間。
頻脈、呼吸速迫
ステージ3:犬)〜72時間、ネコ)12〜24時間。
乏尿、腎不全。シュウ酸カルシウム/馬尿酸結晶
犬では解毒剤が使用できます。アルコールは代謝を阻害し、腎障害を防ぐのでエタノールの注射も効果があるそうです(やったことありませんが・・)。

しょうのう
催吐×(痙攣誘発)、牛乳×
防虫剤の一種です。
5-90分で発症し、
嘔吐、興奮、痙攣、肝・腎障害を起こします。

石油製品(灯油、ガソリン、シンナー、ベンジン)
催吐×、牛乳×
嘔吐、下痢、皮膚炎がおこります。吐いた時気管にはいると肺炎が起こるため催吐は禁忌です。

タマネギ中毒
催吐○、胃洗浄○、活性炭×、解毒剤×
ネギの中に含まれる有毒成分によって赤血球がダメージを受け、
赤血球が壊されて貧血が起こる病気です。
 
タマネギ・ネギ・ニンニク・ニラには成分が含まれますので動物に与えてはいけません。加熱しても破壊されないので、すき焼きの煮汁などにも含まれています。
 貧血を起こした動物は元気がなくなり、
粘膜蒼白・黄疸、ヘモグロビン尿(食後1-2日)、頻脈、脾腫を起こします。
 命に関わることは少なく、タマネギの給与を中止すれば通常良くなりますが、重症例では輸液や輸血が必要となることもあります。

チョコレート中毒
催吐○、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤×
テオブロミンによるカテコラミンの放出が起こり、アドレナリンの放出された「
興奮した状態」になります。呼吸や心臓活動に大きな影響を与えるので、犬にチョコレートを食べさせてはいけません。
軽度の血圧上昇、徐脈/頻脈、不整脈(心室性期外収縮)、興奮、振戦、痙攣、パンティング、昏睡といった症状の他(6-24時間)に至ることもあります。

ナフタリン
催吐×、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤×、牛乳×
防虫剤の一種です。
毒性は高いです。1-2日たってから発症することもあります。
嘔吐、下痢、発熱、腎障害、溶血、メトヘモグロビン血症、独特のにおいがみられます。

鉛中毒
催吐○、胃洗浄○、活性炭×、解毒剤×
つりの重りやカーテンの重しなどに使用してあることがあります。おいしくはないでしょうが遊んでいるうちに食べてしまうんでしょうね。
症状は3-15日以内に起こります。
消化器症状、神経症、有核赤血球、好塩基性斑点がみられます。
重金属を吸着する薬を使用しますが、重金属中毒は怖いです。

ハチ
催吐×、胃洗浄×、活性炭×、解毒剤×
ホスホリパーゼやヒアルロニダーゼなどの化学物質がアレルギー、炎症などを起こします。
局所炎症、痛み、アナフィラキシーショック(30分以内)。
ミツバチは毒針器官が残るのであわてて手でつまんで取ろうとすると残っている毒が体内に注入されます。針と毒袋の間つかむか、とがった物で引っかけて取り除くようにしてください。
ステロイドや抗ヒスタミン薬で治療します。

パラコート
催吐○、胃洗浄○、活性炭?、解毒剤×
除草剤の一種です。肺でフリーラジカルが産生されることにより肺がダメージを受けます。
呼吸が苦しそうだからと酸素をかがせると、余計活性酸素ができて症状が悪化するやっかいな物質です。
草場は特に犬が喜んで遊ぶ場所の一つですので個人的には出回って欲しくない薬剤です・・。
興奮、痙攣、嘔吐、下痢、呼吸困難、嗜眠が起こります。症状は暴露後1-3日後と遅れて出てくることが特徴です。それまでに肺がダメージを受けています。呼吸器症状は2-7日後におこり、肺の線維症、肺水腫、浅速呼吸が見られます。予後は不良です。

パラジクロロベンゼン
催吐×、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤×、牛乳×
ベンゼンの化合物で防虫剤として使用されています。
神経興奮、痙攣、嘔吐、特有の臭い。代謝されてできたフェノールによる肝毒性。牛乳は吸収を助長します。

ピレスリン
催吐?、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤×
おそらく殺虫剤に最もよく使われている薬剤であり、除虫菊に含まれる天然成分の他、安定性をよくさせ効き目を長くさせた合成物(
合成ピレスロイド)があります。通常量では毒性は低いですが、使用量を間違えたり、同じ系統の薬を同時使用すると中毒が起こる可能性があります。
脂溶性、有機リン同時摂取で毒性が増加します。発症は1-3時間以内です。
抑鬱、流涎、筋肉振戦、嘔吐、運動失調、呼吸困難、食欲不振、猫で耳介・肢を振る、表皮痙攣
ゆるま湯で洗浄し体表面についている物質を洗い流す、石油を含有している場合は催吐はダメです。

ホウ酸塩
催吐○、胃洗浄○、活性炭×、解毒剤×
いわゆるホウ酸ダンゴに入っています。人間の子どもや犬がよく誤食します。
流涎、下痢、腹痛、頭側腹部の圧痛、運動失調、知覚過敏、振戦、筋力低下、腎毒性、痙攣、昏睡、死といった症状を起こします。中枢神経症状は後から出てくることがあります。
皮膚洗浄をするほか、利尿をさせて排出を促します。

マムシの咬傷
催吐×、胃洗浄×、活性炭×、解毒剤○
人間はまむしに咬まれて命を落とすことが多いですが、犬がまむしで死に至ることは少ないです。
ヒアルロニダーゼ、ホスホリパーゼA、低ポリペプチド(心毒性、神経毒性)などの化学物質が体内にはいることにより症状が起こります。
まむしの毒は出血毒、溶血毒です。
低血圧、局所浮腫、斑状出血、疼痛、電解質異常、抗凝血、凝血(肝・腎不全)などを起こします。
咬傷1〜2時間で皮下出血、腫脹、浮腫を呈し、その後壊死、潰瘍となることもあります。重症ではショック状態も報告されていますが犬は毒に比較的抵抗性があります。
傷口から毒を吸飲できる場合は切開・吸飲処置をして、まず安静を保ちます。その後は傷口の壊死などに注意しながら、ステロイド、抗ヒスタミン薬を使用します。

メタアルデヒド
催吐○、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤×、牛乳○
ナメクジ駆除剤に入っている成分で、いいにおいがするのか、犬が庭で遊んでいて食べることが多いです。
アセトアルデヒドが体内で産生され代謝性アシドーシス(体の酸性化)が起こります。摂取後15分-3時間から症状が見られ、
初期:
頻脈、不安、眼振(特に猫)、散瞳、呼吸速迫、流涎、運動失調、嘔吐
中期:筋肉振戦、下痢、痙攣
最後:
痙攣、>42.2℃、呼吸不全、チアノーゼ、昏睡、死
アシドーシス数日間輸液をし、アシドーシスを補正します。

有機リン・カーバメート
催吐○、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤○
農薬に使用される成分です。
アセチルコリンエステラーゼ(神経分泌物質を分解する酵素)を阻害(有機リン:不可逆的、カーバメート:可逆的)するため、神経反応が異常になります。神経にはコリン作動性とニコチン作動性のタイプがあるため、様々な症状が起こります。
コリン作動性:
流涎、流涙、排尿・便、呼吸困難、嘔吐、徐脈、縮瞳
ニコチン作動性:
筋線維束性攣縮、衰弱・麻痺、痙攣、不安、呼吸不全
アセチルコリンエステラーゼを活性化させる解毒剤を使用します。

ワルファリン中毒
催吐○、胃洗浄○、活性炭○、解毒剤○
殺鼠剤に使用される成分です。
ビタミンK障害を起こします。このビタミンは止血因子を作るための成分です。初期症状は3日後から起こります。
呼吸困難、貧血、衰弱、蒼白、出血傾向肝壊死が起こります。
止血因子の障害度合いは外部委託の血液検査で行います。ビタミンKを補うために注射や飲み薬を1ヶ月は続けます。
なお、最近は
ビタミンD障害をおこさせる殺鼠剤も登場してきています。こちらの方が恐ろしいという話です。