ベナケバ・シンドローム



 ベナケバ・シンドロームとはフィラリア症の急性期に起こるもので、虚脱、ワイン色の尿、呼吸困難、突然死を起こします。放置すれば死亡率はほぼ100%です。
 発症は急ですが、それまでにも病気は少しずつ進行しています。

 フィラリアにかかると虫は血流に乗って肺動脈の末端まで運ばれます。
 動脈壁が虫体により持続的なダメージを受けるため、
動脈壁は次第にでこぼこのカチカチになります。

 虫体は最初は肺動脈の末端にいますが、病状が進むと肺動脈の太い部分に出てきます。だんだん血液の流れが悪くなり、虫体を動脈末端に追いやる血流が弱くなるためです。
 そして虫体が心臓の中に現れるようになり
三尖弁に絡みつくと急性の三尖弁閉鎖不全を起こします。エコーがなかった時代は虫体が大静脈に詰まって発症するのだと信じられていました。ベナケバ(Vena Cava)というのは大静脈の事ですが、病名は変わらずに残っています。

 急性の心不全となるので犬は
虚脱します。また、虫体がからんで逆流と関連して、もしくは虫体のからんでいるところを血液が流れることにより赤血球が破壊され血色素尿が見られるようになります。

 治療は
外科手術しかありません。成体駆虫薬を行うと死んだ虫は全部肺動脈に詰まるため禁忌です。内科治療を行っても数日以内にほぼ死亡します。発症後時間とともに、腎不全、DIC、その他の併発症がおこるため早い処置が望まれます


 手術は心臓から直接もしくは頚静脈から虫体を摘出することにより行われますが、日本国内では頚静脈経由の手術が主流です。

 ベナケバでないフィラリア症では通常の寄生部位は肺動脈内ですが、ベナケバ時は大静脈〜右心室に虫体が来ているため摘出がしやすくなっています。

 重度の心不全状態であることが多く、不整脈や心停止などもおこりやすいため、
手術中・手術後の死亡率も高いのですが、治療をしなければほぼ死んでしまいますので手術前によく獣医さんと話し合うことが大切です。 
 手術が終わっても肺動脈内病変は残っていますので、引き続き内科治療を行うことが必要です。それと同時に、今後のフィラリア予防をしっかりすることが大切です。

 
しっかりフィラリア予防をしていればかかることのない病気ですので、防げるはずの病気で犬を死なせてしまうことのないよう、がんばってフィラリア予防をしてあげましょう。