人の生きる権利と動物の生きる権利(アニマルライツ)
家族の人に看取られながら死んでいく動物もいれば、人知れず施設の中で処分されていく動物もいます。
誕生を家族に祝福される生命もあれば、食べられるためだけに生きてくる生命もあります。
命とは何なのでしょうか。そして僕達人にはどこまでが許され、どこからが許されない範囲なのでしょうか。人の生きる権利が定着した現在、新たに動物の生きる権利が議論され始めました。
その議論の核心である
生きる権利
というものを考えてみたいと思います。
人は人間だけで生きているわけではなく、人間を取り囲む環境や他の動物・植物と関わり合いを持ちながら生きています。
人間は生きる上でそれら周りのものに多くの犠牲を強いています
。
一方で
生物というものが他の生物の生命をとりこんで生きていく形は自然なものであり、それ自体はやむを得ない
ことです。
周りの環境や生物と関わり合いを持たずに生きている生命は存在しません
。
生物のこれまでの歴史を見ても、その環境でもっとも適応量を持つ種はその他の種を押しやりながら分布を広めていきます。
侵略という言葉を「先住者が持っていた土地や財産を奪い自分のものにすること」と定義するならば、生物の歴史とは紛れもなく侵略の歴史です。
人類の進出でさえも先住の動物にとっては侵略でしかありません。1万年前から現在までに絶滅した種のうちの80%までが人類の影響によるとの研究もされています。
人には生きる権利があると常識のように言われており誰もがそう教えられていますが、それは2つの意味で当たり前の事ではありません。
人の生きる権利は長い歴史の中で社会を成熟させながら、数多くの犠牲の上に人間が築き上げたものです。紛れもない事実として、
人の生きる権利は人類
にとってのかけがえのない財産
です。
大昔は権利とは一握りの特権階級にだけ許されたものでした。それが少しずつ
一般平民男子にも許され、女性にも許され、現在に至っています。昔は一般庶民に権利を許すなどは想像も出来なかったはずです。今は全ての人が人らしく生きることが当たり前になっています。
しかし、だからといって人間の生きる権利が宇宙の中で絶対的であるという事に結びつけることは出来ません。
絶対的な生きる権利があるかと言えば、そんなものはどこにも無い
というのがおそらく本当の答えです。あるとすればそれは
人間の頭の中
にだけ存在するのです。僕達が生きる上で生命を脅かされる心配もなく一人ひとりの幸せを追い求めることが出来るのは、社会という自然の中では特殊な枠組みを作り、そこの中で生きているからです。
動物の生きる権利としては、人にも生きる権利があるように全ての動物も生命を脅かされない権利があるというものから、人間が自分たちのために飼っている動物には与える必要はないんだという意見までいろいろな考え方があります。
動物に生きる権利があるかということは、結局の所
人間社会が動物にどこまで権利を認めるかという
ことなのだと思います。権利を与えるのは自然ではなく人間社会です。社会の中で生きる動物に対しては社会は権利を与えることが出来ます。社会の構成員とも言えるからです。
社会が人間によって人間のために作られた以上、人間の方に力点を置くことは致し方ありませんが、人間が利益を得るためなら不要な苦痛を強いてもいいということは倫理上(人間の価値観ですが)許されないと思います。
人間に対して自らを捧げてきた動物に対してそろそろつきあい方を見直す時期が来ているとは思います。相手が命あるものだという認識を軽んじすぎていたような気がします。最低限不要な苦痛は与えないようにすることは必要だと思います。
一方、社会の構成員でない存在に対しては権利の有無の議論は無意味です。人は神ではありません。生きる権利が人間の作った概念である以上、それを社会の外にいる存在に押しつけることは思い上がりだと思います(
野生動物の生きる権利
)。
人はいろんな命を犠牲にして生きています。それは
善でも悪でもありません
。しかし、人が人として生きていく上では、自分たちがしていることを正しく知ることは必要です。
恩恵にあずかっていながら、犠牲になっているものに目を向けない事は卑劣な行為
です。
いいうわべだけを見せ、都合の悪いことにフタをすることは欺瞞でしかありません。まず向き合うこと、そして知ること、そして感じることが必要です。
また、現状を変えようとするときには、今の形で利益を得ている人がいる人だけに不利益を強いても良い状況にはなりません。多くの人が理解を示さし反対する人を減らすためには、なるべく損をする人を無くす
Win-Winの発想
が必要だと思います。テロまがいの暴力に訴えることは大多数の反発を招く下の下策でしかありません。歴史を動かす波となりうるのは人の心を打ち理解と共感を呼ぶ理論だけだと思います。
まず向き合うことです。そこから何を感じるかは人それぞれです。みんなで感じたことをぶつけ合い、活発に話し合えばいいと思います。時代にあった新しい価値観はそういう多様な考えの中から生まれてくるものなのでしょう。
唯一してはいけないのは自分以外に正しい考え方は無いという独善的な考え方だけ
です。
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