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春の血液検査で高脂血症が見つかった犬で、超音波検査をしたところ、偶発的に胆嚢の粘液嚢腫という病気が発見されました。
今は無症状ですが、放置しておけば、
いずれ胆嚢の破裂や胆道の閉塞を起こし、命に関わる(その時の致死率は50-80%にのぼります)病気です。
そのため、胆嚢の摘出術を行うことにしました。
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(頭が左側です)
皮膚を毛刈り、消毒をしたのち、定法に則って開腹を行います。
左の方に見えるのが肝臓、その右に見えているのが胃です。
胸の深い犬種だったので、横方向に切開を追加しました。
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肝臓をめくると胆嚢が見えてきます。
胆嚢に支持糸をかけ、胆嚢の剥離の際にコントロールしやすくします。 |
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(ここから頭が右)
胆嚢を後ろに牽引しながら、胆嚢と肝臓の間を剥離していきます。
胆嚢が破裂していたり、癒着を起こしていると剥離が大変になるのですが、今回は無症状の段階での手術だったので、剥離は比較的スムーズでした。 |
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胆嚢を下まで剥離すると、胆嚢管が見え、胆嚢がフリーの状態になります。
剥離を行った肝臓面から出血がないかにも注意が必要です。
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胆嚢管を糸で結紮したのち、その遠位を鉗子で把持し、鋏で胆嚢管を切断します。 |
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胆嚢が切り離されました。
胆汁を腹腔内に落とさないように、慎重に摘出し、スタッフに渡します。
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胆嚢を切除したのち、肝臓と胆嚢管から出血がないことを確認します。 |
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定法通り閉腹し、皮膚も縫合すると手術は終了です。 |
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摘出した胆嚢です。
左下側が剥離した部位ですが、癒着をしていなかったので、つるんと取れてきれいな面になっています。
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胆嚢を切開したところです。
通常胆嚢の中は液体なのですが、粘液嚢腫になると、中はゼリー状の物質で満たされ、正常通りに胆汁を排泄することができなくなります。 |
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胆嚢の粘液嚢腫は、閉塞や破裂を起こすまでは全くの無症状なのですが、閉塞・破裂を起こしてしまうと、急性に重篤な症状を起こし、しかも致死率の高い怖い病気です(静かな爆弾を体に抱えている状態です)。
そのため、無症状の間の胆嚢摘出が推奨されるのですが、無症状の状態では発見が難しい(今回も血液検査で高脂血症が認められたことからの偶発的な発見です)
のと、無症状での手術でもそれなりにリスクがある(報告では10-30%の致死率)という、悩ましい事柄を持っている病気です。
とはいえ、無症状で発見された時の方が手術の難易度もリスクも少なくて済むことと、いざ閉塞・破裂になると、致死率が跳ね上がってしまうことから、重症になるまでに手術をしておくことが推奨されます。
この症例の子は、術後の経過も安定して、何事もなく元の生活に戻ってくれました。
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