犬の子宮水腫

 数ヶ月前から、少しずつお腹が膨れてきて、ここ数日で急にぐったりしたというワンちゃんが来院です。
 超音波を当ててみると、お腹の中に液体の詰まった袋状の構造物が確認されました。
 子宮水腫もしくは子宮蓄膿症を疑い、手術のリスクを説明した上で手術することにしました。

 お腹の毛を刈り、消毒している途中です。
 毛を剃るとお腹がパンパンなのが、より良く分かります。

 腹膜を切開します。
 お腹の中の子宮を傷つけないように、注意深く切開しなければなりません。
 おなかを開けると、すぐ下には、超音波で見えていた臓器が確認されました。
 臓器が大きく、最初の切開では出てこなかったので、もう少し切開を加えました。
 臓器をやさしく引き出します。
 破裂させると危険ですので、この手技は特に気をつけて行う必要があります。
 臓器をおなかの外に出して確認すると、この臓器は子宮であることが確認されました。
 左右の子宮を出して、根本を結紮します。
 右の子宮は内容が溜まっていますが、左側は拡張していません。
 過去に帝王切開歴があり、左の子宮が腹壁や腸に癒着していたことから、子宮の中も癒着がおこっていたようです。
 子宮を摘出したら、あとは定法通りお腹を閉じます。
 最初の写真と比べると、おなかがぺったんこになったのが分かります。
 術後、子宮を切開し、内容を確認すると、やや白みがかった半透明の液体でした。
 子宮蓄膿症の時にはもっとドロドロの膿であり、また臨床経過が数ヶ月と長いことから、子宮水腫(子宮の嚢胞状過形成)で経過してきたところに細菌感染が起こり、急に弱ってきたものと推察されました。

 犬の状態が悪かったことから、麻酔に耐えられるかどうかが心配でしたが、何とか頑張ってくれました。
 予後も良好のようです。
 あと数日遅かったら命に関わっていた可能性は高いことから、何とか助けることができてうれしい限りです。