犬の子宮蓄膿症(開放型)の手術

 数日前からぐったりしてきて食欲がないという子が来院しました。
 陰部を見ると、膿が多量排出されているのが確認されました。
 超音波では子宮は分かりにくかったですが、症状から子宮の中に膿が溜まる「子宮蓄膿症」の可能性が高いことを説明し、麻酔のリスクを説明した上で手術をさせていただくことになりました。

 麻酔をかけて仰向けに寝かせたところです。
 陰部に多量の膿がこびりついているのが確認されます。

 定法に従い、開腹の準備をします。
 開腹し、子宮を探ると、どす黒く変色し、内部に液体を貯留している様子の子宮が確認されました。
 蓄膿状態の子宮はもろく、避けやすくなっていることが多いため、丁寧に扱う必要があります。
 避妊手術と同様に、卵巣の血管を結紮していきます。
 卵巣は黄体が発達していました。
 左右の卵巣動・静脈を結紮し、切断したところです。
 後は子宮体部を結紮し、閉腹して終了です。
 今回は子宮頚管が開いていて膿が外に排出される、開放型の子宮蓄膿症でした。
 そのため、子宮がパンパンになって破裂しそう、という状態ではありませんでした。

 子宮蓄膿症では、子宮内に細菌感染が起こり、細菌の毒素によって肝不全・腎不全などの多臓器不全に陥ってしまいます。
 一旦発症してしまった場合、放置すればほぼ死亡する怖い病気です。
 診断がついた時点では、体が弱っていて、手術しても死んでしまうこともしばしばあります。

 一番良いのは、若いときに避妊手術をしておくことによってこの病気にならないことですが、なってしまった場合は、できるだけ早期に手術をして膿の溜まった子宮を摘出することが根本治療となります。
 幸い、今回の症例では手術した後元気になり、無事退院となりました。


犬の子宮蓄膿症(閉塞型)の手術

 数日前から食欲がないという子が来院しました。
 未避妊で中年なので、陰部も確認したのですが、排膿は見られませんでした。
 念のために超音波検査をしたところ、腹部に液体の入った袋状構造が大きく存在していたため、子宮蓄膿症を疑い、麻酔の危険性を説明した上で、開腹手術をしました。

 腹部を開けると、腹膜の直下に、重度に膨満した臓器が見られました。
 傷つけないように気をつけながら、切開を拡げていきます。

 子宮蓄膿症の子宮は、とてももろくなっているため、引っ張って出す、という操作ができません。
 下に手を入れて持ち上げて出そうとするのですが、あまりに臓器が大きく簡単には出てこないため、安全策をとって切開を拡げることにしました。
 しばらく格闘していると、何とか重度に膨満した臓器を体外に出してくることができました。
 上の開放型の症例と見比べると、膿の貯留がとても重度なのが分かります。
 子宮はパンパンに張った状態でした。
 避妊手術と同様に、卵巣の血管を結紮していきます。
 子宮が破裂すると大変ですので、全ての操作に細心の注意を払って行わなければいけません。
 左右の卵巣動・静脈を結紮し、切断しました。
 後は子宮体部を結紮し、閉腹して終了です。
 今回は子宮頚管が閉じていて、膿が外に排出されず溜まる一方、という閉塞型の子宮蓄膿症でした。
 閉塞型の時は、急速に、重度に子宮の中に膿が貯留していきますので、敗血症や子宮破裂のリスクがより高い状態となります。
 万が一子宮が破裂した場合、重度の腹膜炎、敗血症となり、速やかに死に至る危険性があります。

 麻酔の時も、不整脈やショック状態につながる可能性もありますので、とても気を使います。
 今回は、幸い、麻酔も無事に覚め、無事退院となりました。