犬の乳腺腫瘍の手術

 お腹に大きなしこりが出来て来たという犬が来院です。このままでは破裂してしまいそうな様子でしたので、手術をして取ることにしました。

 麻酔をかけて仰向けにしたところです。
 後方の大きなしこり以外にも、いくつか小さなしこりがあったため、片側全部+もう片方の後方を、同時に切除することにしました。切開線は術前にラインしておきます。

 消毒をしてドレープをかけたところです。
 術野は長いので、時間もかかりそうです。
 前方からアプローチして行きます。
 乳腺腫瘍の手術は、切って血を止めて、また切っての繰り返しです。
 出血は、電気メスでコントロールしながら手技を進めて行きます。
 中央部分まで進んできました。
 皮膚を切開すると、皮膚が左右から引っ張られるため、実際に切り取った部分よりも大きな傷口に見えてしまいます。
 生理食塩水をかけながら、術野の乾燥を防ぎます。
 乾燥を防ぐため、前方の術創はこの時点で皮下縫合をして閉じておきました。
 残るは後方の左右です。
 いよいよ、最も大きなしこりに取りかかります。大きな腫瘍では、それを支える血管も発達しているため、慎重に組織を分離して行きます。
 大きな血管は結紮を行い、鋏で切断します。
 大きな血管は電気メスでの止血は困難です。
 切断したところです。
 残りの組織も切除すると、術野を閉じて行きます。
 皮下織を縫合して、まず傷を寄せます。
 皮下織は吸収糸、皮膚はナイロン糸で縫合します。
 皮膚を全て縫い合わせて終了です。
 中央部分は切除部分が大きいため、テンションがかかります。そのため、術創に力が集中しないよう、減張縫合を追加しておきました。
 術創は長いため、縫合も大変です。
 乳腺腫瘍は、避妊手術を行っていない犬で特に多発する病気です。
 放置しておいて、
肺に転移したり、破裂して敗血症などを起こすと命に関わる可能性があります。
 
若いうちに避妊手術をしておけばほぼ予防できる病気ですので、繁殖させる予定がない動物は、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症などの病気を防ぐ意味でも、若いうちに(生後半年〜1才くらいで)避妊手術を行っておくことをおすすめします。
 もし腫瘍ができてしまった場合は、時間が経つと転移や浸潤などを起こし、予後が悪くなる可能性がありますので、もし見つけたら、
様子を見ておかずに、早く動物病院で診てもらって、小さなうちに手術をして取ることをおすすめします。