犬の尿道造瘻術

 尿の出が突然悪くなったという犬が来院しました。
 レントゲンを見てみると、尿道と膀胱に大量の結石が詰まっているのが確認されました。急遽麻酔をかけて尿道チューブを通そうとしましたが、石が邪魔をして、膀胱までチューブを通すことができませんでした。
 そのため、膀胱内に大量の結石が存在することも考慮して、「
尿道造瘻術」を行うことにしました。

 術前です。
 麻酔をかけて仰向けにした後、毛刈りをして消毒をし、手術の準備をします。

 陰嚢の部分の尿道を切開しますので、まずは去勢手術をします。
 通常は、陰嚢の前の部分を縦に一カ所切開するだけですが、造瘻術の場合は、陰嚢の部分の皮膚を大きめに切除します。
 尿道にアプローチして行きます。
 犬では尿道の手前の筋肉を切断しませんので、尿道から分離し、糸をかけて目印にして横によけておきます。
 尿道が出たら、切開します。
 中央の部分を切れば出血は比較的少ないですが、海綿体の豊富なところを切ると出血が多くなりますので注意が必要です。
 尿道内部まで切開したら、鉗子を入れて中を探ります。
 しばらく探査していると、大きな結石が多数出てきました。
 尿道チューブも、この部分で結石にあたって、それ以上奥まで入れられませんでした。
 取れる結石を取りきった後、カテーテルを挿入して膀胱内に貯留した尿を抜きました。
 傷口をきれいに洗浄し、切開した粘膜と陰嚢を取り除いた皮膚を縫合し、手術は終了です。
 尿道はこの位置で開いていますので、今後、尿はここから出ることになります。
 取り出した結石です。鉗子で取りきれる範囲は取ったのですが、まだ、膀胱内には多数の結石が残っています。
 残った結石は、開いたところから出てもらいつつ、尿結石溶解用のフードを食べて溶かして行きます。
 術後2ヶ月の外観です。
 心配していた尿やけもなく、スムーズに尿は出ているとのことでした。
 尿結石は、尿道閉塞を起こしたりすると、急性腎不全に進行して命を脅かすこともある、時に怖い病気です。
 今回の子は、尿道と膀胱に大量の結石が詰まっていたため、手術はそれなりに大変ではありました。
 今後は、尿やけで皮膚炎が起こらないよう、また造瘻部が閉塞しないよう、注意をしてみて行く必要があります。