猫の舌のヤケド

  猫が急によだれをたらし始めて口が痛そう、という猫が来院です。
 よだれということで、まずは口内炎や猫のウイルス感染症を疑いました。
 ただ、
ワクチンは定期的に打っていただいてうっているので、カリシウイルスに対する予防はしているというのと、今まで口内炎の症状はなく、急に突発性というのが気になりました。
 ともかく、まずは口を開けて中を見てみることにしました。


   口を開いてみると、舌が大きく爛れた状態になっているのにまず気がつきました。
 カリシウイルスなどでも潰瘍状に舌炎が起こることがありますが、今回は、舌炎というよりは、文字通り”ただれた”という感じです。
 また、歯肉炎や口角炎(奥歯の奥の粘膜の部分)はありません。

 舌がただれるような原因が何かなかったのか、というのが一番のポイントのようなので、心当たりはなかったのかと尋ねたところ、「そういえば電子レンジで牛乳をチンしてあげました」ということでした。
 それを飲んでから、よだれをたらし始めておかしくなったということで、舌の状態と状況証拠(飼い主さんの証言)からすると、熱いミルクに口をつけて、それが原因で舌がヤケドしたという可能性が高そうです。
 チンした後、混ぜずに温度を確かめなかった、ということでした。
 舌のヤケド自体は肉が盛り上がってきて治ってもらうしかないため、痛みを抑えるための鎮痛剤と、リンゲル液の注射をしておきました。

 電子レンジでチンをした場合の危険性は、獣医師の中でも時折話題になります。
 電子レンジで温めた場合、温められたものは、均一に温まっているわけではありません
 指を入れてみればわかりますが、熱いところと冷たいところは不均一な状態です。
 そのため、熱くないと思って口に入れたら、ものすごく熱いところがあって、そこからヤケドをするということがあります。

 舌で舐めれば表面がヤケドを起こしますが、もっと怖いのは、熱い部分を含んだ食物が食道に入ってきて、食道の損傷を起こしてしまうことです。
 食道損傷を起こしてしまうと、ヤケドしたところが狭窄して、細くなってしまう可能性があります。

 冷蔵庫から冷たいものを出してきて、チンして動物に与えるということはしばしばあると思うのですが、
指で混ぜて、温度を確かめる
チンしたものを、すぐには与えない(熱が周囲に伝わるのを待つ)
ということが大切だと思います。