肥満細胞腫の外科切除

 皮膚にしこりがあるとのことで細胞診検査を行ったところ、肥満細胞という悪性腫瘍を疑う細胞が多数診られたため、手術することになりました。
 ぱっとみは小さなしこりに過ぎませんが、外見では悪性腫瘍かどうかは分かりません。
 肥満細胞腫は周りに浸潤する腫瘍であるため、良性腫瘍よりも大きな範囲で切除する必要があります。
 腫瘍の周囲に少なくとも3cmのマージンを取って切除します。
 浸潤していた腫瘍を取り残すと再発や転移の原因となるからです。
 メスとハサミ、電気メスを使用して健康な組織ごと腫瘍を切除します。できるだけ根本から取るのが原則です。
 無事切除することができました。出血も少なくすんでいます。
 下への浸潤が疑わしいときには筋膜や筋肉の切除も考慮します。
 術部を洗浄し、皮膚をよせにかかります。
 悪性腫瘍では広範囲の切除となるため、皮膚をよせるのが大変なことがあります。今回は何とかよせることが出来ました。
 切除に伴い、大きな組織欠損ができています。術後そのスペースに液体がたまってくるため、ドレーンチューブを入れて排液・治癒を促します。
 術後の外観です。幸い患者は跛行もせず、目下傷の治りも順調です。
 病理検査でグレード2(中程度)の悪性度の肥満細胞腫であると確定診断でした。

 肥満細胞腫はただの皮膚のしこりに見えるのですが、細胞内顆粒を分泌することにより消化管出血や出血傾向、突然死を起こすことのある怖い病気です。
 放置により浸潤や遠隔転移で死亡する可能性が高くなります。
 腫瘍の基本は早期発見・早期治療となります。しこりを見つけたら、まず獣医さんに相談しましょう。