犬の会陰ヘルニアの手術(中臀筋転移術)

  お尻の横が腫れて来て、おしっこが出にくくなって来たということで来院です。
 この子は以前も左側の会陰ヘルニアの手術をしており、直腸固定もしているのですが、今回は右側がなって来たようです。

  麻酔をかけてうつぶせにした状態です。
  ぽこっと腫れているのが分かります。

  皮膚を切開すると、すぐ真下に膀胱が来ていました。
  膀胱全体が出て来ていましたのでかなり苦労しましたが、何とか膀胱を腹腔内に押し戻すことができました。
 筋肉はずたずたになっていて、ヘルニア輪はかなり大きいです。
  筋肉同士を単純に縫うのは不可能ですので、シリコンのインプラントを入れることにしました。
  肛門周囲の筋肉や仙骨の靭帯、骨盤靭帯などを用いて固定します。
  周りの軟部組織や筋肉も縫合しましたが、このまままた吠え続ければ、インプラントごと持ち上げられて来て破綻する可能性が高そうです。
  そのため、中臀筋を用いて穴を塞ぐことにしました。
  切開を前方に広げ、筋肉を分離して行きます。
 中臀筋を分離して、フラップをかけられるくらいの長さにします。
   後ろに転移させ、上から補強するように縫合します。
  後は、常法にのっとり、軟部組織と皮膚を縫合します。
   傷口は中臀筋の転移を行った分、前方に長くなります。
  フラップの強度はまずまずだと思いますが、吠えられ続けると、後ろに圧力がかかり続けるので厄介です。
  会陰ヘルニアが起こる理由は、筋肉が萎縮して行き、腹圧を抑える力が、腹圧に負けるようになる、ということです。
 会陰ヘルニアの術後の再発の有無はその逆で、抑え込む力が腹圧に負けた時、再発が起こります。
 ワンワン吠えさえしなければ、再発率は低くなるのですが、その子の性格によってはどうしても吠えてしまうという子もいます。
 再発率は性格次第と言うこともできるかもしれません。
 強力な壁を作ろうとするほど、外科的侵襲は大きくなる傾向にありますので、どこまでの抑え込む力を求めるかによって、手術の仕方が変わってくる病気です。