犬の後肢外傷の皮膚移植

  交通事故で足をけがしたという犬が来院です。
 診察してみると、激しく肢端を損傷しており、そのままでは縫合もできません。
 しばらく洗浄を繰り返しながら、肉の盛るのを待ち、その後皮膚移植を考えることにしました。

  初診日です。
 骨がむき出しになっていて、激しい損傷です。
 ここ以外にも、いくつか外傷がありました。
 まずは徹底的な洗浄です。

  数日後です。
 壊死して落ちるべき所は落ちて行きます。
 血行が残されているかが境目です。
  2週間ほど洗浄を繰り返していると、きれいな肉芽が持って来ました。
 これくらいになれば、下からの血流が期待されますので皮膚移植の適期です。
 これ以上待つと、白い肉芽になってしまい、血流が逆に減ってしまいます。
  脇腹から移植用の皮膚を持って来ました。
 皮下脂肪を徹底的にこそぎ落とし、下から室流をもらえるようにします。
 傷口の形に合わせてトリミングをします。
  乗せた皮膚に血流を与えられるように、血管の断端をむき出しにします。
 ガーゼや鋭匙を用いて、がりがりと組織を削ります。
  皮膚を移植場所に縫い付けて行きます。
  移植皮膚片の下に液体が貯留しないよう、また血流がもらいやすいように、切開を加え、網状にしておきます。
 縫合が終わると、バンテージをして、くっつくまで待ちます。
  移植片は薄くなり、溶けているように見えますが、目的は皮膚細胞の供給です。
 血流をもらった皮膚細胞はそこに根付き、細胞分裂を行い、皮膚組織を作って行きます。
  3週間後です。
 皮膚はほぼ覆われました。
  この症例では骨や靭帯も大きく損傷を受けていましたので、歩けるようになるか心配だったのですが、何とか日常生活を送れる程度に歩けるようになってくれました。