犬の腹部の肥満細胞腫

  犬の側腹部にしこりができたということで来院です。
 針を刺して調べてみると、肥満細胞というやっかいな細胞が出て来ました。
 肥満細胞腫は局所への浸潤性が強く、余裕を持って大きく取らないと再発することがしばしばある腫瘍です。
 急ぎ、手術をして腫瘍を切除することにしました。

  麻酔をかけて寝かせた所です。
 マージンを広めに取りますが、真ん中に包皮があるため、内側にはあまり大きく取りづらいです。

  皮膚を切っていきます。
  皮下組織を切り進んで行きます。
 腫瘍の摘出の時には、切皮したところから真下までを、一気にずどんと切って行くというのが基本です。
 腹膜にあたる所まで切って行きます。
  反対側からも切って行きます。
 腹膜の筋膜もまとめて切除します。
  真ん中の筋膜が無くなっているのが一緒に切除した所です。
 筋膜は強力な壁であり、腫瘍細胞もそこは簡単に侵入して行くことはできませんので、取り残しを防ぐために、筋膜も一緒に切除しておきます。
  皮膚と皮下を大きく切除しましたので、デッドスペースをなくすために、皮下縫合はしっかりとしておきます。
  何とか周りから組織を集めて来て、縫い閉じることができました。
 右側と比べて、かなりひきつれているのが分かります。
  肥満細胞腫は、最初の手術でしっかりと取りきることが大切とされています。
 そのためには、術前の診察で細胞診で目星を付け、 しっかりとマージンをとって大きく切ることが大切です。
 今回の症例は、その後再発もせず、無事に治って行ってくれました。