9.カンブリア紀の大爆発(古生代前半)
1.カンブリア紀の大爆発

 約5億5千年前、それまで数十数種しかなかった生物が突如1万種もに爆発的に増加しました。この時代、奇妙きてれつな形をした生物=バージェスモンスターが多数現れ、さながら地球上が生命の大実験場でした。


 様々な形態を持った生物が現れる中から現在まで続く基本的な生命の形ができあがりますが、その土台は、カンブリア紀が始まる前の、先カンブリア紀の時代にすでにできあがっていました
 先カンブリア紀には、それぞれの系統の祖先が、それぞれの体のメカニズムを持つに至ってはいたのですが、外見上はほぼ違いがなく、似通った姿をしていました。

 いろいろな体のつくりを持っていた生物が、外見的にも多様になった、というのがカンブリア爆発でおこったシナリオのようです。

 外見的な多様性を持つに至ったきっかけは、まだ明らかにはなっていませんが、ひとつの説としては、生物にとって最も重要な感覚器である「」を持つ生物が誕生したことによって、食う食われるの食物連鎖の流れが加速し、その淘汰圧が生物をして多様な姿を持つに至らせた、という考えがされています。

 このころ固い殻を持った生物が多数誕生しています。食べられる心配がなければ身を守る必要はありません。それまでのそれぞれがばらばらに生活していた時代から食う食われるの捕食関係ができあがってきた事を意味しています。多種多様の生物が登場し、生態系ができはじめます。

2.種の多様化の背景

 多様化することができた背景には、細胞が核膜を得たことが大きく貢献していると言われています。
 遺伝子情報が細胞の中にまばらに存在している原核生物に比べて、核膜をもった真核生物では、よりたくさんの遺伝情報を持つことが出来ます。
 原核生物は生きるのに必要な最低限の遺伝子だけしか持てませんが、真核生物はかつて使っていた遺伝情報や今は使わないけども将来役に立つかも知れない遺伝情報などをストックしておくことが出来ます。

 また9億年前頃から有性生殖というメカニズムが現れたのも重要です。
 有性生殖においては、二つの個体が遺伝情報を半分ずつ出し合うことにより、2つの個体から自分たちとは微妙に違う個体が作られます。
 無性生殖を行う生物では、細胞が二分裂し、自分と同じ個体が増えていくだけです。増殖スピードははるかに速いのですが、同じ遺伝情報であるため、分裂を繰り返しても、変化はあまり見られません。

 有性生殖を行う生物では、遺伝的な揺らぎの中で、少しずつ異なる形質の子孫が生まれ、その中から環境により適した形質の子孫が増えていくことができます。
 生物は、これまでの「増える」という原理に加え、もうひとつの柱である、「環境の変化に合わせて自分の形を変えていく」という原理を確立させました。

 それに加え、原核生物では染色体を1本しか持っていないため遺伝子の変異=形の変化ですが、真核生物では2本持っているため遺伝子変異の形質への影響を減らすことが可能です。発現しない部分を持っておくことが出来るのと合わせて、遺伝子の中に多様性を持っておくことが出来るようになりました。
 それらにより生物はいろんな進化の可能性を模索することが出来るようになりました。

3.脊椎動物の誕生

 バージェスモンスター達はやがて進化の途中で姿を消しますが、生き残ったものの中から新しい生物が進化します。中でもこの時期に生まれた生物の中に体の中に脊索を持つものがいました。この生物から後に脊椎動物が誕生します。

 脊索動物は現在でもホヤとして残っています。ホヤの成体は岩にくっついていますが、幼体は岩に自分で泳いでたどりつきます。ホヤの先祖と人間の先祖は元をたどればこのとき誕生した生物にたどり着くのです。

4.魚類の誕生

 古生代前半の間に魚類が出現します。最初の魚はひれも顎もなく、魚としては不完全でした。
 当時の海の覇者はオウムガイというイカの祖先であり、魚が海の覇者となるのはもう少し後になってからです。