安ければ"良心的"?


ネットで動物病院の評判を書いた文章などを見ていると、
よく「値段が良心的」という表現を目にします。

普段の診療費に付いて書かれていたりするのであればまだしも、
手術代などについて書かれていたりする時には特に、
獣医師として、違和感を感じる事がままあります。

手術に関して、価値の基準を値段の安さでつけられるのは、
どうも腑に落ちないような気がします。

なぜなら、手術の時に、良い手術をしようと思い、
良い糸を使って、良い麻酔をして、としていくと、
必然的にそれなりのコストがかかるからです。

PDSなどの吸収糸を使えば、それだけで1本千円はしますし、
麻酔も安全性の高い鎮静剤やプロポフォールなどを使えば、
数千円はかかります。

それを、安い糸(絹糸は1本数円です)を使い、
安い麻酔を使えば、それだけ安い手術はできますが、
術中、術後の問題(死亡を含めてです)は起きる確率が高くなります。

どちらかと言えば、手術代に関しての"良心的"という言葉は、
"安い"という言葉を、うまく言い換えているだけのような気がします。

飼い主さん側からすれば、「良心を見せて」というのは、
「安くして」ということなのかもしれませんが、
獣医師側からすれば、本当の良心と言うのはそうではないと思います。

「リスクも負担もかけずに、より良くきっちり手術をしたい」
「健康に来た動物には健康に無事帰って行って欲しい」


それこそが、獣医師としての本当の良心だと思います。

注射麻酔だけで寝っぱなしにさせ、安い糸を用いて安くするということは、
僕はけして"良心的"とは思いません。

むしろ、良い麻酔を用い、きちんとした糸を用いて、
より安全性の高い手術をしようとすることこそ、
獣医師としての、本当の良心的に基づいた行為なのではないかと思います。


安い薬、安い糸で、リスクや後遺症状の問題があろうと
おかまいなしに手術をしろと言われても、
少なくとも、僕にはそういう手術はできません。

それは、僕の良心が許さないからでもありますし、
安い麻酔で品質の高い手術をするという自信はないからでもあります。

自分の良心に基づいてきちんとしたことをきちんとするなら、
その分は胸を張って請求してもおかしくないと思います
(相手次第、値段次第で心苦しくなる事もありますが)。

安い=良心的という表現というのはいかがなものかと思うのですが、
いかがでしょうか。

もっとも、なにを求めるかと言うことは、
飼い主さん次第という面は大いにあるのでしょうけれども。


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