ワクチンをうっていなくて病気になったら


吐き気、下痢、咳、くしゃみなどといった症例が来た時、
まず気をつけないといけないのは、
「ワクチンをうっているかどうか」
ということです。

犬や猫でも、ウイルスによってうつる病気と言うのはけっこうあります。
ワクチンによって、昔に比べ発生はずいぶん減っては来ているのですが、
まだなくなったわけではありませんので、ワクチンをうっていない場合、
その病気が感染症によるものでないかどうかはちゅういしなければいけません。

症状を聞いたときは、まずカルテを見てワクチンをうっているか確認します
(初診のときは飼い主さんに聞きます)。

もしウイルスを持っている時に、
それを知らずに待合室で普通に待ってもらっていたり、
飼い主さんがウイルスのついた手であちこちを触ったりすると、
病院の待合室にウイルスが付着しますので、
健康でやってきた子に、ウイルスを移してしまう可能性があります。

ただの吐き気や下痢でけろっとしている場合は、
いきなりウイルスを疑う事はまれですが、
血便で脱水してぐったり、という場合は、
まずパルボウイルスなども頭には入れておかなければいけません。

咳をする、という場合でも、
実はジステンパー、ということもなくはないですし、
咳自体がその他の感染症によって起こっている可能性もありますので、
注意しておく必要はあります。

とくに猫では、ウイルスによって冬場にくしゃみをして鼻がずるずる、
ということはしょっちゅうです。
この間雑誌に載っていたデータでは、
関東地方での調査でも、8割以上の地域猫が、
カリシウイルス(くしゃみの原因となるウイルスです)の抗体価が陽性であった、
ということでした。
(ということは、くしゃみをしていない状態でも、
 野外に行く、もしくは野外生活をしている猫では、
 「おそらくウイルスを持っている」
 と疑って扱った方がいい、ということです。)

ワクチンをうっている場合は、
一応ウイルス疾患の可能性が低いものと想定して対応して行く事になります
(例外として、ワクチンをうっていても発症する
 「ワクチン・ブレイク」というものもありますが)。

ワクチンをうっていなくて何かの病気になっている時には、
対応にも気をつけなくてはいけない事になります。

感染症にかかって病気になっているのであれば、
言うまでもなく感染症扱いで隔離病室に入院となるので、
それはそれで分かりやすいのですが、
ちょっとやっかいなのが、
ワクチンをうっていなくて他の病気にかかり、
手術や入院が必要となった場合の事です。

通常、ホテルなどで預かる場合は、
ワクチンをうっていることを確認してから、
ワクチン済の子に限って預からさせていただいているのですが、
病気になって治療、となった場合には、
ワクチンうんぬんということを言っていられない場合もあります。

そのため、感染症ではなさそうで、
なにかの病気で入院となった場合には、
必要に応じて、インターフェロンの注射をしておいてから入院させていただいています
(もちろんその分の料金はいただきます)。

ワクチンをうっていないという事は、
その子が万一ウイルスを持っていた場合にそれを排泄するという可能性があるだけでなく、
もしも弱っている場合にウイルスに接触すると、
感染してしまう可能性があるという事で、
ふたつのやっかいな点を持っています。

動物病院と言うのはいろいろな子がやって来る場所ですので、
誰が何を持っているかは、ぱっと見は分かりません。

本当は、ワクチンをうっていない子は入院犬舍に入れたくないのですが、
病気になって入院となるとそうも言っていられませんので
入院して治療をさせてもらう事になります。

ワクチンなしの犬が子宮蓄膿症になった場合、
ワクチンをうっていないからとって、
入院・手術を断るというわけにもいきません。

飼い主さんの中にはワクチンをうちたくない、
という考え方の人もいるのかもしれませんが、
現状ではワクチンをうたないという事は、
うつことよりもリスクが高い事ですし、
もしもそれで感染症になってしまうと、
大変な結果がもたらされる可能性もあります。

また、うっていなくて病気になってしまった場合は、
預かって入院をさせる獣医師も気を使います。

先に述べたように、入院中にウイルスに感染したり、
他の個体にウイルスを移す感染源になる可能性があるからです。

ワクチンをうっていなくてウイルスがかかった場合には、
接種をしていなかった飼い主さんの責任だと思います
(極論、入院となって院内感染でもらった場合だとしてもです)。

尿道閉塞で入院した猫が、
退院してからくしゃみをし始めたというような場合、
誰の責任なのか、難しいところではあります。

ワクチンをうっていない状態で病気になったりすると、
獣医師としてはあまり好ましくありませんので、
ワクチンはできるだけうっておいていただきたいと思います。


このHP内の文章、イラストの無断転載を禁じます。
著作権の一切は二本松昭宏に帰属します。
ライン

あなたのご感想を心からお待ちしております。

おなまえ(ハンドルでも)

メールアドレス(できれば)


性別

メッセージ・ご感想