ワクチンの間隔、どれだけ空けるの?


4月になり、狂犬病の注射のシーズンとなっています。
僕の病院でも、このところ、毎日狂犬病の注射をうっています。

その時気をつけないと行けない事のひとつが、
「混合ワクチンをいつうっているか」
ということです。

もしも、混合ワクチンをうってからずいぶん時間が経っているようであれば、
先に混合ワクチンをうってから、
改めて狂犬病注射をすることも考えなくてはいけません。

ジステンパーやレプトスピラは、特に抗体価が下がりやすいと言われているため、
1年を大きく越えているのであれば、狂犬病注射の前に、
先に混合ワクチンをうっておいた方が無難です。

したがって、狂犬病注射をうちに来たという人であっても、
混合ワクチンをしばらくうっていない人の場合、
混合ワクチンの話をしておいて、
先に混合ワクチンをうってから狂犬病をうつか、
もしくは今日は狂犬病注射をしておいてから、
また後日、狂犬病注射をうちに来てもらうかを選んでもらっています。

その時、よく聞かれる質問というのが、
「狂犬病と混合ワクチンを一緒にうつ事はできないの?」
というものです。

結論から言えば、
狂犬病ワクチンと、混合ワクチンの注射を一緒にうつ事はできません。
なぜかと言えば、直接の理由は、ワクチンの能書に、
一緒にうってはいけない
と記載してあるからです。

薬というものは、飲み薬でも注射薬でも、
かならずその使い方が能書に記載してあるのですが、
使用にあたっては、その能書の使い方を遵守するというのが大原則です。

ワクチンと言うのは、アナフィラキシーを含む
アレルギーなどの副作用の可能性を持っているのですが、
きちんとワクチンの使用法を守っている限りにおいては、
ワクチンを使用して副作用が起きたとしても、
その責任と言うのはメーカー側が被ってくれます。

でも、メーカーの示している使用方法を守らず、
逸脱した使用の仕方をしていると、使用時、副作用が起きたとしても、
メーカーはその責任を負ってはくれません。

何か事故が起きたとしても、
「その責任は使用方法を遵守しなかった獣医師側にある」
とメーカーに言われてしまう可能性が出て来ます。

しかも、ワクチンを二種類同時にうったとすれば、
どちらのワクチンが副作用を起こしたか分からず、
どちらのメーカーも、おそらく「自分が悪い」と言いません。

となると、

使用方法を守らなかった獣医師が、
副作用の全責任を負わなければいけない

という事になります。

もちろん、先に、
「能書には同時にうたないようにうってありますので、
 副作用が起きたとしても、それは飼い主さんの自己責任という事になりますが、
 それでもうちますか?」
と説明して、それでも、
「同時にうってくれ」
と言われた時には、飼い主さんの責任でうてるとは思います。

ただ、能書に「同時にうつな」と書いてある以上、
同時にうたない事を勧めるというのが本筋ではあると思います。

となると、うつ時期をずらすという事になりますが、
それぞれのワクチンのうつ時期をどうするかが問題です。

ただ、これは獣医師が頭を悩ませる様な問題ではなく、
能書を見れば、いつ次のワクチンをうつかは書いてあります。

すなわち、

混合ワクチン → 狂犬病 の場合は1ヶ月、
狂犬病 → 混合ワクチン の場合は1週間、

間を空ける事になります
(そのワクチンの能書次第ですが)。

なぜ、空ける期間に差が出てくるかと言えば、
生ワクチンというのは、「病原性を薄めた、生きたウイルス」であり、
一旦接種されると、体に侵入し感染して増加し、免疫力が付いて来て、
体から排除されるという経路をたどるからです。

つまり、自然状態と似た経過を辿って、
感染→免疫力獲得→排除
となって行くのであり、体の反応に時間がかかります。

一方、不活化ワクチンは、死んでいるウイルスですので、
感染と増加という経路は無く、
体の中での反応時間は生ワクチンの場合よりも短くなります。

したがって、ワクチンの種類によって、
空けるべき時間に、差が出て来ます。

空ける期間は、ワクチンの能書に記載してあるものであり、
獣医師が考えないといけない様なものではなく、
能書にしっかり書いてあるものです。

ただ、飼い主さんに説明するとき、空ける期間の説明をしても、
少しややこしいのか、なかなかに覚えてもらいにくいのが困ったものです。

結局、ワクチンをうった後、証明書に次うつ日にちを書き込んでおいて、
「次はこの日以降に来て下さい。」
と書いて渡したりする事もしばしばです。

ワクチンというものも、副作用の可能性がある程度ありますので、
能書の指示はしっかり守らなければいけないのですが、
たまに同時にうったりしている話を聞く事があるのが、
聞いていて驚いてしまうところです。

実際には、副作用が出ない確率の方が高いとは思うのですが、
もし、副作用が出て、飼い主さんから
「変なうち方をしたから副作用が出た」
と訴えられたりしたら、ワクチンメーカーも守ってくれず、
完全に獣医師の責任となってしまい、アウトの状況になってしまうと思います。

したがって、ワクチンを同時にうつと言うのは、
獣医師のリスク管理のためにも止めておいた方が良いであろうと思います。

"ワクチンを同時にうってはいけない"
ということを知らない飼い主さんも多いと思いますので、
そういう記載があると言う事を、
飼い主さんにも知っておいていただきたいと思います。


このHP内の文章、イラストの無断転載を禁じます。
著作権の一切は二本松昭宏に帰属します。
ライン

あなたのご感想を心からお待ちしております。

おなまえ(ハンドルでも)

メールアドレス(できれば)


性別

メッセージ・ご感想