ワクチンで副作用の出た動物の再接種をどうするか


診療において、ただうつだけと思われがちなワクチンではありますが、
接種のタイミングや患者の体調など、
考えなければいけない事も多いです。

中でも考えどころなのが、
「かつてワクチンでじんましんなどの副作用の出た動物」
の場合です。

ワクチンの副作用と言っても、だいたいの場合は、
じんましんが出たり、軽度の下痢や嘔吐、
ちょっと元気がなくなったくらいの、軽度な副作用である事が多いです。

副作用が出た場合は、すぐに病院に来てもらって、
ステロイドの注射をします。
すると、その日の夜、ないし次の日の朝までには、
楽になって来る事が多いです。

一番怖いのはアナフィラキシーなどの重度の副作用ですが、
今のところは幸い、そこまでの強い副作用は開業以来経験していません
(回数と運の問題でしょうけれども)。

副作用が出ても、その時はそれで落ち着く事が多いのですが、
次に問題となるのは、次の年になって、
またワクチンの再接種の時期になった時に、
さてどうするか、ということです。

開業医であれば、誰しも悩むところだと思うと思いますが、
だいたいの選択肢は次のあたりだと思います。

・ワクチンの種類を減らす
・ステロイドを先に接種しておく
・うたない

ワクチンの種類を減らすと言うのは、
かつて8種だったりした場合、次の年はそれを5種などに変更してうつ、
というものです。

ワクチンの中で、一番副作用の出やすいのはレプトスピラだ、
と言われていますので
(以前メーカーが出したデータでは、
 5種も8種も副作用の発生率はほぼ同じでしたが)、
8種で副作用が出た場合は、それを5種に変更してうって試してみる、
というのも、よくある選択肢だと思います。

ステロイドの先制注射、というのも、かなり姑息ではありますが、
けっこうな獣医師が行っているかもしれません(僕もしばしばしています)。

ワクチンの副作用は、ステロイドを注射すれば、
直に落ち着くものがほとんどですので、
副作用が出る可能性のある場合、
先にうっておいて、副作用が出てこないようにしてしまおうというものです。

炎症反応が出て、免疫反応が刺激されるものを、
先にステロイドをうって炎症反応を抑えると、
ワクチンの効きがどうなるのか、という素朴な疑問はありますが、
副作用が出て来ると困るのは実際の問題です。

ところで、能書的(裁判的?)に言うと、
唯一の正解は、実は3番目の「うたない」というものだそうです。

「副作用の出た動物にはワクチンはうたないように」と書いてあるため、
以前の副作用の経歴がある動物にワクチンをうって副作用が出た場合、
ワクチンメーカーはその結果についての責任は持ってくれないという事であるようです。

メーカーの責任問題的にはそう言う事かもしれませんが、
まだウイルス疾患が撲滅されたとはまったく言えない状況で、
副作用が出たからと言ってワクチンをうつのを止めた場合、
抗体価が下がって来てウイルスと接触し、
感染して発症してしまったらどうするのか、というのもまた、
臨床家としては心配になるところです。

人間のように、みんながワクチンをうっていて、
集団免疫力を付けていて、ウイルス自体が集団内に発生する状況にない、
というのであれば、
集団内の個体が少々ワクチンをうっていなかったとしても、
他の抗体保有者に守ってもらえるのですが、
ワクチンをうっていない個体が周辺に普通にいて、
時折そういう個体がウイルスを散発的にまき散らしている、
という状況だと、ワクチンの副作用と感染症のリスクと、
いったいどちらが高いのかというところです。

もちろん、以前アナフィラキシーの症状を起こして、
ショック症状になって死にかけた、という経歴があれば、
無理をしてうつという事もまずないかとは思いますが、
「前回ワクチンをうった後、なんだかしゅんとしてたんです」
という、副作用なのかどうかすらはっきりしないようなものまで、
副作用としてワクチン免除としてしまうと、
免疫力を持たない個体を増やしてしまうことになります。

それを考えると、能書に書いてあるのを承知した上で、
飼い主さんに説明して、種類を減らすか、ステロイドを注射するか、
というのもひとつの選択肢になってしまうのかもしれません。

都会でここ10年ウイルスなんて診た事ないよ、
というのであれば話は別ですが、
僕の町のように、去年はうちでジステンパーが出た、
先月は近所でパルボが出た、という状況だと、
集団免疫よりも、個体の防御ということが第一目標となって来ます。

中には、
「副作用なんてたまたまだから、気にせずうつ」
なんて猛者(無茶)な獣医師もいるかもしれませんが、
リスクを天秤にかけながら危ない橋を渡って行かなければいけない状況もある臨床家としては、
今後も難しいシチュエーションと言うのはしばしばやって来るのだと思います。

より多くの動物がワクチンをうっている事によって、
その地域でのウイルス疾患の発生が抑えられ、
地域の全体の動物が守られる事に繋がりますので、
ワクチンをうっていない飼い主さんは、
何はともあれ、ワクチンをうっておいていただいていただきたいと思います
(何年おきにうつか、ということはさておきです)。


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