腫瘍はいつ取るのがいいの?


腫瘍という病気は、動物医療においても比較的よく見られる病気です。
昔よりも動物の寿命が延びたために、
人間同様、高齢化してから発生する病気が増えて来ているようです。

皮膚や乳腺など、体の一部にしこりができたという主訴で
病院に連れてこられる子もいます。
また、中には、健康診断やワクチンのときに、
健康検査をしていて、たまたま獣医師がしこりを見つける事もあります。

腫瘍のようですねと説明した時、よく聞かれるのが、
「いつくらいで手術をしたら良いでしょうか。」
という質問です。

腫瘍の大きさと手術というのは、
やはり飼い主さんは悩むところが大きいようです。

腫瘍がまだ小さいうちは、特に症状もありませんし、
麻酔をかけて手術をするというのは、それなりに負担もかかり、
リスクを伴うものです。

「小さいのなら、まだもうしばらく様子を見ても・・。」
と思う飼い主さんも多いようです。

でも医学的に言うと、いつが手術どきか、という質問に対しては、
「小さいうちに手術した方が良いですよ。」
という答えが間違いなく正解です。

なぜなら腫瘍は、放置しておけばどんどん大きくなって行くものだからです。
基本的に小さくなる事もありませんし、
放置していても治るものではありません。

むしろ、放置していれば、いずれ大きくなり、
局所に浸潤して行ったり、他の場所に転移したりします。

小さなうちに手術しておいた方が、
大きくなって容積も重量も増えてから手術するよりも手術も簡単ですし、
体に対しての負担も少なくなります。

実際、大きくなってから手術した方が、
手術の手技も大変になります。

腫瘍はしこりをぎりぎりのところで取れば良いわけではなく、
必ず正常な組織を含めて取らなくてはいけません。
すると、手術して除去される正常な組織も大きなものになり、
体の負担はそれだけ大きなものになります。

腫瘍は、直径が2倍になると、容積は約8倍以上になります。
大きなしこりを摘出した後は、組織にも大きな欠損ができますので、
それを縫い縮めないといけません。

また、皮膚の欠損が大きくなれば、それを埋めるために、
皮膚転移手術や皮膚移植手術など、
大掛かりな手術が必要になる事もあります。

大きくなるまで放置した場合、
腫瘍の周りの組織に腫瘍細胞が浸潤している可能性も高くなります。
悪性の腫瘍は、たこ足状に正常な組織に侵入して行きます。
正常組織にくさびのように食い込んでいる腫瘍細胞を取り残した場合、
そこから腫瘍が再発する可能性も高くなります。

転移も問題です。
血管に入り込んだ腫瘍細胞は、血液に運ばれて、
体の別の場所に移動する事があります。

中でも、肺の毛細血管に引っかかってそこにとどまった細胞が増殖し始めると、それが肺への腫瘍転移の原因となる可能性も高くなります。
腫瘍が大きくなれば、そこから血管に入り込む細胞の数も多くなり、
転移が起こる可能性も増えてしまいます。

肺に転移していた場合、しばしば手術は不適応となってしまいます。
そうなると、様子を見ていたためにとんでもない事になってしまった、
という事になってしまいます。

腫瘍が小さいうちであれば、
きちんと根っこから切除できる可能性も高くなり、
別の場所に転移していない可能性も高くなり、
腫瘍自体による全身状態の悪化もまだ起こっていない可能性が高くなります。

しばしば、
「まだ小さなしこりだから様子を見てみます。」
という飼い主さんの言葉を耳にする事があります。

でも、それは違います。
正しく考えるなら、
「まだ小さなしこりだから、今のうちに手術しましょう。」
ということになります。

様子を見る事に、何らの利点はありません。
あるとすれば、腫瘍の成長よりも本人の寿命の方が早く訪れてくれるとき、
何もしない方が不必要な外科侵襲をしなくて済む、
というときだけです。

小さい腫瘍だから様子を見ましょう、という事は、
医学的に見ればまるきり間違っている意見です。
本人に負担をかけず病気を根治する事を考えるなら、
見つけたその時点で、なるべく早く手術をするべきだと思います。



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