潜在陰睾、おろすのは倫理にもとる


病院によって、獣医師によって考え方は違うのかもしれませんが、
僕が師匠の先生から、「これだけはしてはいけない」と教わり、
僕もその通りだ、と考えている処置というのがあります。

それが、
「潜在睾丸の子の陰睾を降ろして来て、陰嚢の中に入れる」
という処置です。

僕はまだ依頼された経験はないのですが、
典型的に考えられるシチュエーションは、

ドッグショーに出したいけど、潜在睾丸の子だから出場する資格がないので、
降ろして来てドッグショーに出られるようにしたい

という場合です。

潜在睾丸自体は、体内の高温にさらされて、
精子の産生能力を失っているのですが、
もう片方が陰嚢内に降りていればそちらの睾丸が精子を産生しますので、
「カタキン」の子でも、繁殖能力は残っています。

「お腹の中に残った睾丸を降ろす」ということをぱっと聞くと、
とくにどうという事もないように聞こえますが、
実は倫理的に問題のある行為です(あくまでも犬の話です)。

なぜなら、犬において潜在睾丸は遺伝性疾患であり、
遺伝するものだからです。

犬の繁殖学の本を見ると、どの本にもだいたい、
「潜在睾丸の個体は、倫理的に繁殖に用いてはいけない」
と記載されています。

犬の潜在睾丸は、体内に睾丸が残っている場合、
去勢手術を受けなければ潜在睾丸が腫瘍化して、
命に関わる結果をもたらす可能性があります。

体内に残った潜在睾丸の腫瘍化の確率は、正常時の約13倍です。
したがって、たかが「カタキン」と見過ごせるものではありません。

遺伝的な問題が引き継がれると分かっている個体を繁殖に用いることは、
獣医師としての倫理に反している行為です。

まして、出品するので陰睾を治して欲しい、などと頼まれた場合、
まかり間違えてその子がチャンピオンなどになってしまえば、
チャンピオンとなった子は多くのブリードに用いられるようになりますので、
遺伝する病気の形質が、無数の子に受け継がれてしまいます。
遺伝する病気をどんどん生み出すと言うのは、
間違いなく、「悪いブリード」の典型です。
遺伝すると分かっている病気の持ち主をブリードさせるというのは、
ブリーダーとしての倫理にも反する事です。

犬でチャンピオンになった場合、その個体は多くのブリードに用いられて、
多くの遺伝子を犬種の中に残すようになりますので、
軽々しく陰睾の矯正手術を行う事は、
甚大な結果をもたらす可能性があります。

陰睾だと出品できないと言うのは、
チャンピオンになって子を残す資格をもう持っていない、
という事でもあります。

「悪影響をもたらすかもしれないと分かっている行為をする」
ということは、獣医師としてのモラルに反している行為であり、
一般的には御法度の行為です。

嘘かまことか、獣医師の中には、
悪い事と知りながら、頼まれれば数十万円の報酬をもらって、
外道行為に手を染める人もいるという話を聞いた事があります。

ブリーディングを考えている人の中には、
「降りて来ていないのなら降ろせば良い」
と考える人もいるのかもしれませんが、
それは"してはいけない行為"です


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