採血で一番大切なもの


採血と言うのは獣医療においては一番基礎の手技ですが、
時に難しかったり、失敗すると気まずかったり、
なにげに気を使う手技でもあります。

昔は僕も採血に苦労していたのですが、
獣医師になってもう十数年の今では、
何とか苦労はしない程度にはできています。

人によって採血のコツと言うのは異なると思うのですが、
僕も僕なりに採血のコツを身につけています。

僕が考えるに、採血で一番大切なものは、

「心の清らかさ」

であると思います。

これは別に冗談ではなく、実際にその通りです。
別に心が汚れていると血管に入らないとかいう訳ではないですが、
採血で針を刺すときは、心をクリアな状態にしておかなければ、
入るものも入りません。

僕は採血をするときは、たいがいの場合、
飼い主さんに横についてもらってするのですが、
飼い主さんが見ている前で、動物の血管に針を刺すと言うのはかなり気を使うものです。

飼い主さんは採血できて当たり前だと思っているでしょうから、
もし刺して血管に入らなかったら、
けっこう気まずい雰囲気になってしまいます。

その雰囲気に慣れていないときは、
「もしはずしたりしたらどうしよう」
などと、ネガティブな事を考えてしまうのですが、
不安な気持ちで刺すときというのは、たいていはずしてしまったりするものです。

飼い主さんの目の前でするという事は、
逆に言えば、すっと刺せば、けっこうかっこいいことではありますので
(けっこう「おお〜」という人も多いです)、
ここは腕の見せ所と気合いを入れて刺すというのもひとつの手ではあります。

ただ、あまり気負いすぎていると、
失敗した時に焦る気持ちにつながりかねませんので、
やはり平静な気持ちで臨む事が一番だと思います。

ある程度経験を積んでくれば、血管のある場所などはなんとなく分かって来ますので、
知識とか技術とか、そういうものはそれほどの問題ではなくなって来ます
(不器用だったら別ですが)。

刺すときは心の目で血管の走行をたどり、
その姿をイメージの中で固定する事が大切なのですが、
心の目で血管を捉えたら、あとは自分を信じて、
思い描いたところに針をすっと進めるのみです。

同じ種類の動物であれば、体の基本構造というものは同じですので、
血管の走行もさすべき場所も、ほとんどは似通っています。
あるべき場所に、あるべき角度で、あるべき流れで進入させれば、
そうそうはずすものではありません。

とは言っても、たまにははずしてしまう事もあるわけですが、
そこでさし直す時こそ心の平静さが試されます。
春はフィラリアの採血が続々とやって来ますので、
採血技術は嫌でも鍛えられるのですけれどもね。


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