かわいいから、ではなく


 子供に生き物を愛する心を育てさせようとするときに、大人はよく「ほら見てごらん、こんなにかわいいんだよ」と諭そうとします。
 それ自体は悪いとは言いません。ただ、子供相手に話すのはよしとしても、それを伝える大人側はその言葉は誤りを含んでいることも理解しておかないといけないと思います。

 「犬が好き」という人に「なぜですか?」と聞くと、たいがいの人は「かわいいからです」とか、「ふかふかしているからです」と答えます。
 「では、かわいくない犬やふかふかしていない犬は好きではないのですか?」と聞くと、「そうかも知れませんね」となります。
 
かわいい犬は好きだけれども、かわいくない犬は好きではないのであれば、それは犬が好きだというのではなく、犬が持つ“かわいらしさ”や“ふかふかさ”といった特性が好きだということになります

 動物と触れ合わせるときに、「かわいいから価値がある、大切にしないといけない」と教えると、それは、裏返せば
かわいくないものには価値がない、大切にしないでいいと言っていることにもつながります。
 それは、
人間が他の命に価値づけを行い、かつその価値づけが正しいと言っていることを意味します。

 
人間以外の生命は人間の価値観とはまるきり関係なく生きていますそれぞれの命は自分が生まれ持ったしくみや生き方を持って、それぞれの生を全うすべく精一杯生きています
 動物が持つ毛並みは人間にかわいいと言われるためにあるのではありません。きれいな鳴き声を持っているのも、美しい色を持っているのも人間に評価されるためではありません。

 
それぞれの種が持つ特徴は、それぞれの種が環境で生きていくために長い生の歴史の中で獲得してきたものです
 
人間は、人間の価値観とは関係なく精一杯生きているそれぞれの命の姿を見て、勝手に自分達の価値観でもってかわいいとか気持ち悪いとか判断しているのです

 人間が他の命を見てどう感じるかは人間の勝手です。ただ、人間が他の命につけた価値づけを正しいものであると考えるのは、自分達の知性への過信であり、ごう慢さの表れによるものです。

 僕は命の大切さを教えようとするときに、「かわいいから大切にしましょう」と教えることは好きではありません。
 命の尊さは他人から教えられるようなものではなく、
自分自身の心で感じるものです。

 まず子供達に伝えるべき事は「どの命もそれぞれ精一杯生きている」、ということだと思います。
 そして、そこから
精一杯生きている命を粗末にしてはいけないということと、自分も負けないように精一杯生きないといけないということを感じ取っていって欲しいと思います。


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