硬い綿棒は良くない


病院をやっていると、普段のケアのことを相談される事もよくあります。
その中でも多いのが、
「耳掃除はどんな風にすれば良いですか。」
という質問です。

なにやら、本によれば、
「コットンで耳の中を拭き取りなさい」
とか、
「綿棒で、耳の中をごしごしこすりなさい」
とか、書いてある事は本によって様々のようです。

中には、獣医師から見ると、
びっくりする様な事が書いてある事もしばしばです。

耳のケアはよく尋ねられるところではありますが、
一般的な答えとしては、
「汚れがなかったら、とくにいじらなくてよい」
ということになります。

人間であれば、耳垢が耳の中に溜まってきますので、
それを取る「耳掃除」をよくします。
でも、犬猫では、基本的に耳道がピンクで、汚れが出ていなければ、
触る必要はありません。

飼い主さんは、どういう風に耳をケアすればいいか、
と考えるようですが、実際には、耳を触りすぎる事によって、
耳道を傷つけ、二次的に外耳炎にしてしまっている事の方が多いです。

中でも良くないのは、硬い人間用の綿棒を用いて、
ごしごししてしまうことです。

耳の中の皮膚は、とてもデリケートで、
触られると、正常構造がダメージを受けます。
おまけに、人間の耳と異なり、
犬猫の耳は、横の耳道(水平耳道)に加え、
縦向きの耳道(垂直耳道)があります。

硬い綿棒を入れてごしごしすると、
垂直耳道と水平耳道の間ばかりがこすられて、そこがダメージを受けます。
したがって、硬い綿棒は、犬猫の耳掃除には使ってはいけません。
動物病院で硬い綿棒を耳の中に入れる時は、
耳の汚れを顕微鏡で見るために、検体を採取して来る時だけです。

犬猫の耳の中に黒っぽい汚れが出て、臭う時は、
通常外耳炎を起こしている時です。

外耳炎の状態になっていれば、耳は洗浄して、汚れを洗い流し、
抗生剤の点耳薬を入れる必要があります。

耳を洗浄した時、綿棒を入れて、汚れを拭い取りますが、
その時の綿棒は、芯に綿花を巻いて、先っぽをふわふわにさせた綿棒です。

硬い綿棒でごしごしと汚れをこすり取るという事は、
獣医療においては、"してはいけない"事です。
耳道の上にいる菌は、ごしごししたところでは取れず、
耳道は傷つき、よけい炎症がひどくなってしまいます。

"こすり取る"のではなく、"洗浄する"のが、
耳の汚れがある時のするべき処置です。

動物病院に、外耳炎の症例が来た時は、
耳の洗浄用液体で洗い、汚れを洗い出し、
最後に綿棒で汚れと残った液体を拭い取る、というのが基本です。

「拭いても拭いても、黒い汚れが出て来るんです。」
と飼い主さんから言われる事もありますが、
それはすでに外耳炎となっており、
病院で治療をする必要のある状態です。

その状態でごしごしとこすりまくれば、
よけいに炎症は悪化して、悪影響となるだけです。

そうでなく、汚れもなく、ピンク色できれいな場合は、
とくに触る必要もない状態です。

奥がきれいで、手前だけ茶色いのがついている、というくらいであれば、
コットンで軽く拭い取ってもいいと思いますが、
家では、耳の中は、極力触らない方がいいと思います。

気になる場合は、早めに病院に相談、
というのが、病気が悪くならないようにするための基本です。



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