簡単な手術はない


 「簡単な手術はない」、この言葉は自分自身に対する戒めの言葉でもあります。
 確かに手術自体の手技に関しては簡単な手技のもの、難易度の高いものがあります。
 一方で、去勢や避妊手術、病変の切除、その他もろもろの処置をするとき、切っても切れないのが全身麻酔という手技です。
 
患者の不動化、痛みの回避、筋肉の弛緩と言った必要性から、ほとんどの手術は麻酔を用いて行われます。

 
麻酔に簡単な麻酔というものはありません。本人の年齢、健康状態、基礎疾患、犬種によって、リスクや方法は変わりますが、大きな手術の麻酔も小さな手術の麻酔も基本は同じです。
 麻酔の目指すものはただひとつ、
安全に麻酔をかけて安全に麻酔をさますということだけです。

 昔と比べると、安全性や覚醒と言った面では格段に進歩していますが、
現時点で体に対して全くリスクのない麻酔法というものはまだ存在しません
 覚醒や深度調節が昔より格段に優れたガス麻酔が主流となっていますが、それにしても下に示すリスクは実際にあります。
 麻酔のリスクは大きく分けると、・・

1.
呼吸抑制
2.血圧低下や心臓抑制による
循環機能低下
3.術後の誤嚥、その他

 などがあります。

 一見簡単そうな手術に見えても、実は肝臓が悪かったり、腎臓が悪かったり、貧血があったり、・・と基礎疾患を持っている場合があります。そのため、中年以降の動物においては手術前の血液検査をお勧めしております。

 麻酔をかけると言うことはその子の命をあずかると言うことです。
 
100%安全な麻酔はありませんが、獣医師は安全性が100%に近づくように細心の注意を払う努力をしています
 
簡単な手術手技であったとしても、麻酔をかけるときの心構えは一緒です。「何かあるかも知れない」、そう思っていつも全力投球で麻酔をしています。
 獣医師は文字通り命を削って手術に向かっているのです。


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