自分で病状を言っている飼い主さん


獣医師というのは、医師と同様、
仕事を通じて知り得た情報を他人に漏らしてはいけないという、
「守秘義務」というものがあります。

知り得る情報というのは、動物の健康状態や医療的な経緯の全般です。
したがって、飼い主さんから、

「あの動物どうだったんですか?」

などと聞かれても、情報を教えたりするわけにはいきません。

ところが、待合室で待っている患者さんというのは、
他の患者さんと話をしている時に、
けっこう、

「うちの子は、〜の病気で、こちらで手術をしてもらったんですよ。」

などということをぺらぺらとしゃべってしまっていることがあります。

人間だったら、あまり自分の病気の事を他人にしゃべったりしたりはしないと思うのですが、
動物では、けっこう飼っている動物の医療情報を、
快く教えるという事もけっこうあるようです。

それはそれで、本人が他人に言う分には良いのですが、
困るのは、他人の医療情報を聞いた人が、

「さっきの子の手術って、大変だったんですか」

などと、本人がしゃべっていたことと絡めて僕に尋ねて来る事です。

さっきまで本人がしゃべっていたことでも、
僕が尋ねられたからと言って、僕がしゃべるわけにはいきません。

本人が教える事と獣医師が教える事は意味合いが違います。
そのため、差し支えない範囲で、
「そうですねぇ」とか「元気になって良かったですね」
など、言っても無難な範囲では言いますが、
それ以上の詳しい情報に踏み込みそうなときは、

「僕からは言えませんので、本人に尋ねてみていただけますか」

と答えるようにしています。

自分で言うのは構わなかったとしても、
他から、しかも獣医師がしゃべるというのはよろしくありません。
さっきまで自分でしゃべっていた内容だったとしても、
なにをしゃべっても構わなくて、なにをしゃべられると困るかは、
当人にしか判断のできない事だからです。

重病になったとき、それを治療して元気になったときというのは、
病院に来たとき、他の人にも教えてあげたい気分になるようで、
待合室の会話を聞いていると、けっこういろんな会話が聞こえて来たりするものですね。


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