保定八割


春になり、今年もフィラリアの検査の時期がやって来ました。
この時期は、フィラリア検査と狂犬病の注射がワンセットで多くなる時期です。
毎日、次々に何頭もの犬から採血をしなければいけません。

採血はどの犬からもしなければならないのですが、
採血を嫌がらずにさせてくれるかどうかは犬次第です。

診察台の上で硬直したまま、
手を持ってもぴーんと手を伸ばして固まっている犬、というのは、
とても採血が楽なのですが、一方で、
採血をしようとしても、もがもが動き続けて、
腕を持たせてくれない子もいます。

いかに採血がうまい人でも、動いている動物からは、
さすがに血を取る事はできません。

通常は、血管にゴムのバンドを巻いて、血管を怒長させ、
膨らんだ血管に針を刺して採血を行うのですが、
動く子では、バンドを巻いていても、暴れた拍子に、
そのバンドがはねとばされてしまうこともあったりします。

獣医師の世界では、採血がうまくできるかどうかは、よく
「保定八割」
であると言われます。

いかにうまい人でも、保定がしっかりできていなければ、
採血をする事はできません。

逆に、保定がしっかりできていれば、
八割の犬は、新米の獣医師でも採血をする事ができます
(残りの二割は、上級者向けの難しい血管です)。

嫌がりさんの犬の場合は、ごまかしごまかし、
気を散らしながら前足から抜くか、
前の方を飼い主さんに持っておいてもらいながら、
後ろ足を持っておいてもらい、採血するかです。

よほど暴れん坊で噛み付いて来る場合は、鎮静剤をうって、
とろとろにしてから採血をする場合もありますが、
滅多にはありません。

一番良いのは、飼い主さん自身に軽く持ってもらっている間に、
すっと終わってしまう事です。

無理矢理押さえつけて採血をすると、
犬にしてみれば、
「嫌な事をされた」
と感じられて、その次からは、さらに採血を嫌がるようになってしまいます。

怖そうだけど、ぎゅっと我慢したまま硬直していた場合などは、
採血が終わった後、飼い主さんと僕とで、
うんと褒めてなでてあげるようにしています。

一年に一度だけの、ちょこっとの辛抱ですから、
嫌な思いをさせないように、すばやく終わらせたい所です。


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