避妊手術、実はけっこう大変


動物病院で、一番多い手術のひとつは、避妊と去勢です。
飼い主さん的には、避妊も去勢も、
同じ様なイメージでとらえられているのかもしれませんが、
実際には、手術の手技においては、
避妊手術と去勢手術では、かなりの差があります。

去勢手術の場合、タマタマの少し前あたりを切って精巣を取り出し、
血管と精管を縛って切断し、
あとは切開したところを縫合すれば、
それで手術の手技は終了です。

何と言っても、取るべきものは目の前に見えていますし、
精巣は皮膚を切開した所の下にすぐあり、
結紮も縫合も苦労するような所はありません。

一方、避妊手術では、皮膚を切った後、
皮下を分離し、腹膜を切開し、卵巣・子宮を探し出し、
体外に持ち上げた後、卵巣をしっかり取り残さないように深いところで縛り、
その上を切断し(その手技が左右、合計2回)、
子宮頚部の所もできるだけ深い部分で縛り、切断して、
その後、腹膜と皮下織、皮膚を縫合する、
という複雑な手順をこなさなければいけません。

たかが避妊手術、と思われがちですが、
実は、切開、結紮、縫合、止血、
その他の基本的な手技が全て高いレベルで求められる、
ある程度難易度の高い手術であったりします。

卵巣・子宮は、腎臓の後ろ側の、けっこうお腹の深い部分にありますので、
卵巣をしっかり出してくるというのも、ある程度の技術が必要です。

しっかり卵巣を取り残さないように出してこないと、
卵巣を取り残してまた発情が来てしまいますし、
しっかり血管を縛っておかないと、
思わぬ出血につながる可能性があります。

卵巣の根元の血管を結紮して切った後、
お腹の中に戻したとたんどこかで出血し始めた、
なんてことになったら、身の毛もよだつ思いがします。

避妊手術は、脳神経外科などのように、
限られた人にしかできない、ものすごく難易度の高い手術、
と言うわけではありませんが、難易度から言うと、
中等度くらいに難易度の高い手術です。

中でも、太ったゴールデンなどの避妊手術となると、
難易度はさらに上がります。

避妊手術の手技の過程において、一番難しい手技は、
卵巣をしっかり引き出して、卵巣の根元で結紮し、
そこを切断する所までです。

そこがすんだら、手術の峠は越えた事になります。
今でこそ、よほどの太っちょ以外の避妊手術は
自信を持ってできるようになりましたが、
その昔は、避妊手術の手術のたびに、
お腹の痛い思いをしていました。

ひとつひとつの手技をしっかりこなして行けば、
そうそう怖い事はないのですけれども。



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