利益のために避妊手術を勧めてる?


動物病院の獣医師は、避妊の是非について語る時、
ほとんどの人が、
「避妊・去勢はしておいた方がいいですよ。」
というスタンスで話をします。

するのとしないのとを比べた時、
手術をしておいた方が、圧倒的に得られる利益が大きいから、
というのがその理由なのですが、
動物病院や獣医師に不信感を持っている人の中には、もしかしたら、
「利益目的で手術を勧めやがって。」
と思う人も、中にはいるかもしれません。

でも、獣医師が手術を勧めているのは、
別に利益を得ようとしているから、ではありません。
なぜなら、飼い主さんたちがみんな避妊手術をしている時よりも、
みんながしていない時の方が、
おそらく病院に入ってくる利益は大きくなるからです。

実際問題、犬というのは、繁殖器に関する病気の多い動物です。
雌犬ではだいたい半年に一度、定期的に発情期がやってくるのですが、
犬の発情期における独特の特徴として、排卵が起こる発情期の後に、
プロジェステロンというホルモンが、
およそ2ヶ月間にわたって分泌され続ける、ということがあります。
この時期は「発情後期」と呼ばれています。

プロジェステロンの影響で乳腺と子宮が刺激されることによって、
乳腺は腫瘍化しやすくなり、
子宮は細菌感染から子宮蓄膿症と言う病気を起こしやすくなります。

早期に避妊手術さえしておけば、
どちらも避ける事のできる病気なのですが、
手術をしておかなかった場合、だいたい3〜4割の動物は、
どちらかの病気にかかります。

運が悪いと、どちらかの病気にかかった後、
しばらくして、もう片方の病気も発病してしまう事もあります。

僕の病院でも去年、犬の乳腺腫瘍を見つけたので手術をしたところ、
手術が終わって2ヶ月ほどしてから、
今度は子宮蓄膿症でぐったりして来て、
再度手術をした、という子がいました。

だいたい、犬の避妊手術は3万円前後くらいだと思いますが、
乳腺腫瘍の手術は5〜10万円、
子宮蓄膿症になれば10万円近くの治療費がかかります。

もし、動物病院が利益だけを考えるのならば、
避妊手術など薦めないようにしておいて、
どんどん、ばたばたと病気になってもらい、
手術をその都度して行った方が、経済的な利益は大きいという話になります。

しかも、発情中に交配をして、望まない妊娠などをすれば、
妊娠中に堕胎手術まで依頼される症例が増えます。

でも、まともな獣医師は、
そんなことをして自分たちの収入を増やそうなどとは考えてはいません。

獣医師が避妊手術を薦める理由は全て、ここまでの話の裏返しです。

すなわち、避妊手術をしておけば、
犬において致命的となり得る病気を予防する事ができ、
望まれない妊娠をなくす事ができるということです。


獣医師の存在する理由は、

飼い主さんと動物が、幸せに、健康に暮らせるよう、その手助けをする。

ということにつきると思います。

避妊手術をせず、そのまま飼い続けるという事は、
獣医師が使命として目指そうとしていることに、
しばしば相反することです。

だからこそ、獣医師は、おせっかいと言われようが、
避妊手術をしておく事をお薦めするのです。

もちろん、手術をしなくても、病気にならない可能性もありますし、
病気にならずに済むなら、それに越した事はありません。

でも、獣医師として臨床をしていると、
避妊さえしておけば避けられた病気に出会ったり、
避妊さえしておけば、不幸な境遇に合わずにすんだ、
という動物を目の当たりにする事が日常茶飯事です。

もちろん、避妊をしておく事を強制する様な法律は、
現在日本にはありませんので、手術するかどうかは飼い主さん次第です。

でも、メリットとデメリットを比べると、
手術をしておいた方がはるかにメリットが大きく、
だからこそ、獣医師が手術しておく事を薦めているんだ、
ということは、誤解のないよう、ご理解いただきたいと思います。



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