フィラリアは予防しなくても良い?


先日、犬を飼っているが、うちの病院には来た事がないと言う人から、
電話がかかって来ました。
お話をしてみると、

「フィラリアの薬って飲ませないといけないんでしょうか。」

とのことです。

「ここらへんはフィラリアもうようよいますので、
 予防していなければかかってしまいます。
 フィラリアに感染して死んだ犬は何度も見ていますので、
 しておいた方が良いですよ。」

と答えると、

「でも、ネットで、
 "フィラリアの薬は体に悪い"
 "フィラリアのいい薬があるから、感染してから薬で殺せば良い"
 という情報を見たんです。
 できることなら、体に悪い薬はなるべく飲ませたくないのですが。」

との返事です。

・・やれやれ、ネットの影響か。

この手の認識は、根本から間違っている上に、
本人もすでに洗脳されてしまっている事が多いので、
訂正はなかなか大変です。

「フィラリアの薬って、副作用が怖いと聞いたのですけれども。」

「フィラリアの薬自体は、安全性も高いので副作用が出る可能性は低いです。
 フィラリアに感染している子に投与すると肺炎や腎炎、
 アレルギーの症状を起こして命に関わる可能性もあるのですが、
 きっちり血液検査をして確認してから飲めば、
 副作用が出る可能性は極めて低いです。

 僕も、フィラリアの薬で副作用が出た子は見た事がありませんが、
 フィラリアに感染したために、腹水がたまって心不全になったり、
 ベナケバ症候群と言う、急性の状態になってぐったりした子は何度も見ています。」

「でも、感染してからでも間に合うんですよね。
 いい薬があると聞きました。」

「フィラリアの成虫駆除薬はヒ素剤です。
 昔の薬は安全性が高くなく、ヒ素中毒になる可能性があったのですが、
 今の薬は改良されており、中毒の可能性は下がって、薬自体は安全性が高くなっています。

 でも、それと、"安全に駆虫できる"ということとはまた別です。
 というのも、フィラリアの成虫駆虫をすると、
 死んだ虫は全部肺動脈に詰まるからです。

 肺動脈に詰まると、肺と心臓に負担をかけ、
 もともとの状態が悪いと、それで犬が死に至ってしまうという可能性もあります。

 フィラリアで肺と心臓がどれだけダメージを受けているかは、
 "虫体数×寄生年数"で決まって来るのですが、
 虫体数が多いほど、感染年数が長いほど、駆虫に伴うリスクは高くなります。

 フィラリアは感染すると、確実に肺動脈を傷つけ、
 心臓と肺にダメージを与えますので、安全な駆虫と言うのはあり得ないですよ。」

そこまで言うと、飼い主さんはちょっと思案している様な気配でした。

「感染していればそのまま予防薬を飲むのはたしかにリスクがあるのですが、
 今までは予防をなさっていたのでしょうか。」

「はい、去年まではしていました。
 ただ、ネットでそう言う話を見たので、
 フィラリアの予防に疑問を持ったんです。」

「そうでしたか。
 フィラリアに関しては、しておかないと、ほぼ100%ここら辺ではかかりますし、
 気づいた時にはひどい状態になっているという事もよくありますので、
 ワンちゃんが大切であれば、なおさら、
 しっかりフィラリアの薬は飲ませてあげていただいた方がいいですよ。」

そう言うと、飼い主さんは、

「分かりました。
 ご丁寧にありがとうございました。」

と言って電話を切りました。

気がつくと、結構な時間を話していましたが、
雰囲気的にはまた向こうの病院に行きそうな気配のような気もしました。

・・まぁ、これでがんばってフィラリア予防をしてもらえれば、それでいいか・・。

最近は、ネットでの、フィラリアの薬は危険だの(検査なしだと時に危険です)、
予防などしなくていいだの、感染してから駆虫すればそれでいいだの、
明らかに間違っていて、しかもかなり危険な情報が飛び交っているようです
(情報源は特定のサイトに限られているのでしょうが)。

がんばって説明したことの裏側には、
いい加減で間違っている知識を、無責任にネットでまき散らしている人にたいして、
ちょっとムキになった部分もあったりします。

ネットでおかしな知識をまき散らしている人に対して、
獣医師も個別に説明していてもらちがあかない部分はあるのですが、
ちょっとでも啓発につながって行ってもらえればと願うところです。


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