フィラリアの薬はいつまで飲むか


※本州のだいたいの地方で当てはまる話ですが、
 地域によって投薬時期が異なりますのでご注意ください。
 お住まいの地域の投薬時期については、
 かかりつけの先生にご相談して下さい。



10月も終わりになって来て、
今年も、あるひとつの質問がよく聞かれるようになって来ました。

その質問は、
「フィラリアの薬って、まだ飲まないといけないんですか?」
というものです。

飼い主さんからすれば、もう涼しくなって来て、
蚊もあまり見なくなって来たのに、
なんでまだ飲まないといけないんだろう、
という疑問も起こるかと思います。

ですが、獣医師としては、その質問への答えは、
「まだ少し飲んでおいた方が良い」
ということになります。

そもそも、なぜそういう質問が出て来るのか、ということですが、
そこには、飼い主さんのフィラリアの薬に対しての誤解があると思います。

それは、

フィラリアの薬は、フィラリアを予防してくれる

という誤解です。

『フィラリアの予防薬』は、実際は予防をしてくれる薬ではなく、
フィラリアの幼虫が皮膚の下にいる未熟な間に、
その幼虫を殺してしまうという薬です。

フィラリアの幼虫が体内に入ってこないようにする、
という"予防効果"は、一切ありません。
分かりやすく言い直せば、この薬は「フィラリアの幼虫の駆虫薬」です。

なら『予防薬』なんて名前付けるな、と言われそうですが、
まったくその通りだと思います。

何を予防してくれるかと言えば、
「フィラリアに感染するのを防いでくれる」ということです。
なぜ『予防薬』と名乗っているかと言えば、
飼い主さんにとって、一番分かりやすい表現だからだと思います。

フィラリアの予防薬は定期的に飲まなければいけませんが、
それは、皮膚の下にたまった分を殺し、たまった分を殺し、
ということをシーズンの間、繰り返すということです。

フィラリアの薬は、モノにもよりますが、
イベルメクチン製剤で言えば、投薬の15~50日前に入って来た幼虫を、
確実に殺す作用を持っています。

そのため、シーズンの途中で薬をやめてしまい、
最後まで飲まなかった場合、最後の部分が駆虫しきれず、
殺しそこなった幼虫が成長してしまい、
成長したフィラリアが肺動脈に移動して、
感染成立ということになってしまう可能性があります。

日本糸状虫協会の推奨では、
蚊がフィラリア幼虫を感染させる能力を持ち始めて(HDU>130)
1ヶ月後から飲み始めて、
感染能力がなくなってから(HDU<130)
1ヶ月後まで飲ませることとなっています。

僕の地域では、シーズンの終わり、HDUが130を切って来るのが、
だいたい10月末~11月頭くらいです。
となると、もう蚊を見なくなったからと、
10月の投薬でやめてしまうのは、まだ早いということです。

10月の投薬は、9月に入って来た分を殺すものですので、
そこでやめると、10月の分がまるまる予防できず、
フィラリアに感染してしまう可能性があります。

また、感染の最期の日が11/1だったとして、
11/1にフィラリアの薬を飲んだとしても、
先程述べたように、フィラリアの薬は、
入って来たばかりの幼虫を殺せるものでもないので、
もう少し余裕を持って、12/1くらいまで飲ませた方が無難です。

「蚊もいないのに、なんで飲ませないといけないのか。」
とはよく聞かれるところですが、ポイントは、

蚊がいなくても、体の中には
まだフィラリアの幼虫が残っている可能性があるので、
その分をしっかりとやっつけるまで投薬を続けないといけない。

ということです。

フィラリアの予防薬に、『予防薬』なんて名称がついているのが、
そもそもの分かりにくくなっている大本ではあるのですが、
かといって、『フィラリアの幼虫の駆虫薬』なんてパッケージに書くと、
それはそれで何の薬か分かりにくくなってしまいますので、
表現が難しいところです。

蚊を見なくなったからと、投薬をやめてしまう人も多々いますが、
そういうことですので、しっかりと最期まで投薬を続けてあげるよう、
お願いする次第です。


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