動物病院は誰のために


 全ての職業は世の中に暮らす人の役に立つためのものであり、社会からの要請にこたえる形で成り立つものです。自分の生活や自己満足のためだけに行われるものは職業ではありません。
 パン屋さんがパンを焼くのは食べておいしいと言ってくれる人のために焼くのです。野球選手が高額な年俸をもらうのはそれによって人々に夢と日々の生活の潤いを与えるからです。
 金銭を得ることだけを目的にするならば、社会的な存在意義はありません。

 動物病院も例外ではありません。動物病院が存在するのは病院の経営者が良い生活を送るためではありません。
病気の動物を治療し飼い主さんと動物が幸せに暮らす手助けをすることによってたくさんの幸せをつくり出し、社会がより豊かになるために貢献する、そのために存在するものです。

 一方で
お金は確かに大切です。獣医師は病院を開いた時点で莫大な借金をしますし、新しい機材や設備、スタッフを導入し、病院を充実させるために新たな投資をしていかなければなりません。

 しかし、
お金は病院の存在のための手段であっても、存在の目的ではありません。獣医師が目的とすべきは自分の知識と技術・経験を発揮して社会に健全に貢献していくと言うことです。

 社会貢献とは一方的な自己犠牲によるものではなく、その行為により本人がより自分らしく充実した人生を送ることができ、かつ社会の発展に結びついていくものです。
 健全な社会貢献を行うということは
それ自体が喜びと充実感に満ちたことです。社会貢献という言葉を自らの社会的地位を向上させるために使うなら、それは偽善の2文字が入り込んできていると言えます。

 全ての職業は誰かの幸せと社会の発展につながっているものです。幸運にも獣医師という職業は自分の行ったこととその成果を肌で感じることがたやすいという職業です。
 獣医師にとって最大の報酬は
動物が自分の行為によって元気になってくれることと、飼い主さんがそれによって喜んでくれることです。

 動物病院は
動物と飼い主さんのためにあるものです。そして、その職を健全に全うすることは獣医師が自分らしく生きるためのよりどころとなるのです。


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