預かってなくなるか、帰ってなくなるか


動物病院は病気になった動物を治療するところです。
理想は病気の子を治療して、全部元の健康な状態に戻してから、
飼い主さんのところに帰ってもらう事ではありますが、
相手は生きている命ですので、いつもそううまく行くとは限りません。

となると、健康な状態に戻す事よりも、
飼い主さんに納得してもらう事が一番の課題になる状況というのも中にはあります。

状態次第では、預かる段階、もしくは預かっている最中に悪化したりして、
「預かっている場合に亡くなりそうだな」
という動物もいます。

そんなとき、悩むのは、
「預かって治療をして、そのまま病院の中で亡くなるのと、
 治療よりも家族で看取る事を優先して、おうちで亡くなるのと、
 はたしてどちらがいいのだろうか」
ということです。

どちらがいいかということは、はっきり言いきれる様なものではなく、
飼い主さんによって、病気の種類によって、どちらを望むかは変わって来ます。

「たとえ助からなかったとしても、できる事を全部してあげたい」
と望む人もいれば、
「助からないのであれば、家でみんなでさよならを言って見送りたい」
と言う人もいます。

どちらを望むかは人それぞれですが、
獣医師としては、飼い主さんの望みを聞き、
希望にあった選択をしてもらわないといけません。

獣医師が最後まで治療をしたいと思ったとしても、
飼い主さんが連れて帰りたいというのを断り、
院内でなくなったとすればおそらく恨まれてしまいます。

最後を家で迎えたいと思っている時に、
危ない事を途中で伝えなかったとしたら、
それは飼い主さんの意向を無視し、
選択する権利を奪ってしまった事になります。

もちろん、預かって欲しいと言っているときは、
預かって治療を続けるのはもちろんなのですが、
それでも、飼い主さんに納得できる選択をしてもらうためには、
今の状況と今後の見通しをはっきりと正確に伝え、
その上で家族で考えてもらい、最善の選択をしてもらえるようにしなければいけません。

したがって、危ない時に「危ないですよ」と伝える事は、
飼い主さんにより良い選択をしてもらうために、
まずなにより一番最初に必要不可欠なこととなります。

治療をしても元気になってくれず、横たわったままで状態が悪いときと言うのは、
獣医師としては無力感と寂しさを感じる瞬間ではありますが、
納得してより良い選択をしてもらい、
後悔をしないようにしてもらうために、
すべきこととできることを考えてあげたいところです。


このHP内の文章、イラストの無断転載を禁じます。
著作権の一切は二本松昭宏に帰属します。
ライン

あなたのご感想を心からお待ちしております。

おなまえ(ハンドルでも)

メールアドレス(できれば)


性別

メッセージ・ご感想