"あの時ああしていればどうなったか"


臨床をしていて常々思う事は、

ひとつとして同じ症例はない

ということです。

本通りの症状を起こしていて、
本通りに検査結果が出て来て、
本通りに治療をしたら本通りに治る、
ということなどそうそうはありません。

診療をしていると、同じ様な病気なのにまるで異なる症状を示していたり、
本通りの治療では反応せず、試行錯誤に治療を行ってみて、
それでようやく落ち着いてくれたりする事もあります。

病気によっては、ひとつの病気に対してひとつの治療法とは限らず、
いくつかの治療法の中からあうものを考えて試してみなくてはならない事もあります。

それで良くなってくれれば万々歳ということになるのですが、
時には、治療に反応してくれず、
あれよあれよという間に亡くなってしまったりする事もあります。

もちろん、治療法を選択するときは症状と所見を見て、
自分なりに"一番これが良いだろう"、
と思うものを選択するわけですが、
その選択で良くならなかったりしたときは、

あの時、違う治療をしていたらどうだったんだろう

あの時、あの薬を使っていればどうだったんだろう

と、たらればの話が胸につっかえたようにずっと残り続けます。

先日の大野病院の裁判の時にも、主治医の先生が検事に責められて、
「あの時別の選択をしていればどうなったか・・。」
と言っていたそうですが、その気持ちは僕にも分かります。

医療と言うのは不確実性を含んでいるものですが、
うまく行かなかった時には、医療者は自分の選択について、
どうしても責任を感じ、別の選択肢をとった場合の可能性を考えてしまいます。

医療者と言うのは、自分の選択で目の前の命が左右されると言う、
一般のサービス業とは異なる状況にある職業です。

自分の選択次第で相手の命が助かったり助からなかったりする、
ということは、精神的にはストレスにはなるのでしょうけれども、
逆に言えば、
「自分が一生懸命治療すれば、助けられる命がある」
ということは、医療者としての大きな心の支えになるのだと思います。

僕も、飼い主さんに怒鳴られたり恨まれたりという経験は、
多くはないですが身を持って体験しています。
獣医師である限りは、それでも、
助けられる命を助けるために、何とか頑張るしかないですね。


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